自己紹介(2017)

ブログを開設して4年が経過し、私の考え方も変わってしまった面があるので、自己紹介を新しくしました。以前の自己紹介(2013年版)を引用しつつ、変わった部分を説明していきます。

<自己紹介>
HN:hachapin
twitterID:@hachapin2

年齢:20代

学歴:学部卒

関心:人間・言語・社会・社会問題


HNは遊民にしました。twitterをやる機会も増えたので、「強制労働制」とか「カネの奴隷」といった言葉に興味のある方は是非フォローしてください。

当時の「関心」もなんだかよくわからない感じでしたが、読む本の領域は広がる一方なので、「自分の関心がわからない」と素直に認めることにしました。

<ブログの目的>

・社会の見方や社会に対する不満・不安を共有すること
・緩い連帯をつくること


「不満・不安を共有」「緩い連帯」、この2つの言葉からは想像できないかもしれませんが、ブログを作った当時、実は「ここを言論空間にするぜ!」と考えていました。が、しかし、予想外の困難に直面します。私の飽きっぽさであります。記事の更新ボタンを押すまでは、記事の内容・テーマで頭がいっぱいなのに、記事の更新ボタンを押してしまうと、それらはなぜかきれいさっぱり消えてしまい、興味も失ってしまうことが判明したのです。自分の興味・関心をコントロールできるはずもなく、論法・レトリックを学んでもやる気がなければどうしようもない。私の野望は頓挫しました。

当時はこんな野望を抱えていたので、記事の内容・書き方も前のめりになっていたと思います。そんなわけで、過去記事の多くはお蔵入りとなります。

ちなみに今は何の目的もありません。「書くこと」自体が目的化したのかもしれない。

カテゴリーも削って「考察」と「おはなし」だけになりました。自己紹介(2013)から消してしまいましたが、以前は「自分」とか「テレビドラマ」とか「書評」とか「コメント返信」とかもありました。

<ルール>
・更新ペースは週に一回(日曜から月曜へ日付けが変わるとき)とする。
・1記事の文字数は2000字以内を基本とする。


更新ペースは変わらず、文字数は目安になります。

それでは、よろしくお願いします。
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迷子

「あなたのおうちはどこですか?」

「わかりません」

「そうですか」

「ららららら」

「あの子のおうちはどこですか?」

「わかりません」

「そうですか」

「るるるるる」

「あなたのおうちはどこですか?」

「あなたのおうちはどこにもありません」

「そうですか」

「ららららら」

「あの子のおうちはどこですか?」

「あの子のおうちはどこにもありません」

「そうですか」

「るるるるる」

「お父さんか、お母さんを、探しましょう」

「お父さんも、お母さんも、いません」

「そうですか」

「あなたには、お父さんか、お母さんが、いるのですか?」

「わたしには、お父さんも、お母さんも、いますよ」

「本物ですか?」

「本物ですよ」

「現実ですか?」

「現実ですよ」

「嘘はすぐにばれます」

「嘘ではないのでばれません」

「事実と現実は異なります」

「わたしには、お父さんも、お母さんも、いますよ」

「事実は現実の欠片のそのまた影でしかありません。現実の欠片のそのまた影は現実にはなりません」

「どうすれば現実になるのですか?」

「切り離されているので、現実にはなりません」

「何から切り離されているのですか?」

「世界からも、時間からも、切り離されています」

「わたしは切り離されているのですか?」

「みんな切り離されています」

「そうですか」

「点になっています」

「どうしようもない」

「苦しい」

「悲しい」

「悲しくはない」

「苦しくはない」

「苦しいね」

「悲しいね」

「苦しいな」

「悲しいな」

「どうしようもない」

「しかたがない」

「ひひひひひ」

「もしもし、せめて、光をおくれ」

「光ならここにありますよ」

「ここにある光ではありません」

「光ならあそこにありますよ」

「あそこにある光ではありません」

「光ならどこにでもありますよ」

「嘘はすぐにばれます」

「嘘ではないのでばれません」

「嘘の光はすぐにばれます」

「光はすべて本物です」

「光はすべて偽物です」

「しるべになるので本物です」

「迷子になるので偽物です」

「どうしようもない」

「しかたがない」

「ほほほほほ」

「もしもし、せめて、教えておくれ」

「あなたのおうちはどこですか?」

「苦しい、教えておくれ」

「あの子のおうちはどこですか?」

「悲しい、教えておくれ」

「あなたには、お父さんか、お母さんが、いるのですか?」

「どこにあるか、教えておくれ」

「何がですか?」

「知っているくせに」

「何がですか?」

「気づいているくせに」

「わたしは、今、どこにいるのですか?」

「あなたは、今、どこにいるのですか?」

「あなたは、今、どこにいるのですか?」

「みんなは、今、どこにいるのですか?」

「わかりません」

「知りません」

「知りません」

「わかりません」

「どうしようもない」

「しかたがない」

「もう帰れない」

「帰る場所がない」

「帰してもくれない」

「いつから帰る場所がないのですか?」

「きっとはじめからなかった」

「誰が帰してくれないのですか?」

「みんな」

「みんな」

「みんな」

「せめて、光をおくれ」

「光はぜんぶ偽物です」

「光はきっと本物です」

「光は本物にちがいありません」

「光はぜんぶ本物です」

「なんだ、そういうことだったのか!」

「かんたんなはなし」

「ふふふふふ」

「さっきから唄を歌っているのは誰ですか?」

「さっきから唄を歌っているのはみんなです」

「みんなはなんで唄を歌っているのですか?」

「みんなは生きているから唄を歌っているのです」

「ははははは」

「ははははは」

「たのしいな」

「たのしいね」

「うれしいな」

「うれしいね」

「ははははは」

「ははははは」


夢の国の外国人観光客

「ねえ、どうして働かなくちゃいけないの?」こうした質問をする子供はもういない。人は何かをしたいと思ったときにだけ活動するようになったからである。カネによって強いられる労働は、なくなった。そして労働を知る世代がいなくなると共に、世界からは「労働」や「失業」という概念も消えていった、ある一国の例外を除いて。

かつて、人工知能や技術の急速な進歩が始まったとき、その国で活躍する研究者は興奮気味に言った。「ついに、労働者の努力を、みなさんの努力を、客観的に計測できるようになるのであります!本当の意味で、努力が報われる社会が到来するのであります!技術の進歩によって、みなさんの夢が、実現するのであります!」その国の人々が漠然と「これで社会が良くなる」と思ってなんとなく流されているうちに、この発言は確固たる指針となっていった。彼らは我々とは全く別の方向に進んだのである。

結果、「労働」や「失業」という概念さえなくなる世界的傾向にもかかわらず、この国は失業率5%を維持し続けている。見方を変えれば「世界で唯一「本物の労働者」に出会える国」になったのである。不幸中の幸い?この国は観光国として「生き残る」ことに成功した。しかし、そうして得た地位を守るため、そこに住む人々は非常に「厳しい」道を歩んでいる。

観光国として「生き残る」ため、国を挙げての観光資源開拓が行われた。「本物の労働者」とは、なにか?根源的な問いを国民的に突き詰め、ついに人々は「こたえ」に辿り着き、無形文化遺産登録の栄誉を勝ち取った。こうして「四大遺産」が生まれたのである。

その一つが満員電車。ストレスに黙々と耐えて通勤する姿が、労働者の使命感を体現するのである。観光客の大半は見学者用のスペースからその姿を眺めるだけだが、中には命知らずがいて、労働者と一緒に満員電車に乗る者もいる。大抵は20分程度で意識を失い、「みんなに迷惑をかける」ことになるのだが。ちなみに進歩した技術の利用は禁止され、労働者は毎日電車での通勤を強いられている。

その一方で、職場には次々と技術が導入された。「四大遺産」の一つ、「勤勉の精神」を表現するためである。職場には小型の超高性能センサーが張り巡らされ、労働者の表情・姿勢・脈・体温・呼吸および神経伝達物質・ホルモンバランスなどなどを瞬時に把握し、「勤勉の精神」を表現する理想値とのズレを「異常」として検知する。また、職場の人数分だけ人型の監視ロボが配置される。ロボは労働者の働きぶりを監視する役目の他にも、検知された「異常」を「改善」するための薬やエナジードリンクを労働者の元に届ける役目も担っている。ちなみにこれで「改善」しなかった場合、ロボは労働者に特製の「活力剤」を注射する。

「活力剤」の副作用はかねてから指摘されていたので、私は会社の案内役にきいてみることにした。

「その注射は、数時間の覚醒と引き換えに寿命が数日縮むことや、長期的に脳機能が低下していくことが指摘されていますが?」

案内役はきょとんとして答えた。

「そんなことより、目の前の仕事の方が大切ではありませんか?」


労働者を管理する技術の導入は進んだが、「生の体験」を重視するという国の方針のため、観光客に見られる労働者は全く保護されていない。最も気を使っている会社でさえ、マジックミラーを少し設置する程度である。この点はずっと気になっていたので、休憩中の労働者に話をきいてみた。

「あの、見られていて、気持ち悪くないですか?」

「はあ、まあ、最初は気持ち悪かったけど、もう慣れました。外国の人に喜んでもらえて嬉しいですし、仕事にもやりがいが出ます」

この応対の何がどう作用したかわからないが、私は反射的にこう質問していた。

「あなたの仕事は、この巨大なシステムの中で、どんな意味を持っているのですか?」

彼が驚いた表情で見返してきたので、私は慌てて言葉を継いだ。

「いや、つまり、なんというか、実は仕事は全て機械が裏でやっている、といった可能性を考えたことがありますか?」

彼はうつむき、力のない声で呟いた。

「そんなこと、考えたこともなかった・・・・・・」

しばしの沈黙の後、ハッと気づいた彼は自分に言い聞かせるように言葉を続けた。

「しかし、何かの役に立っていることは確かでしょう。だって、給料を貰っているのですから」


この国の街を歩くと、いたるところでリクルートスーツの人々をみかける。シューカツ生である。「厳しい社会の入り口」としてシューカツも無形文化遺産に登録され、「四大遺産」の一つとなった。シューカツ生は労働を求め、ひたすら会社の門を叩き続ける。終わりの見えないイニシエーションをやり遂げた者だけに、一人前の労働者への道が開かれるのである。極めて重要な意味を持つこのイニシエーションを保持するため、シューカツへの技術の導入は禁止されており、いまだに人と人との面接が行われている。私は運よく面接帰りのシューカツ生と話すことができた。

「シューカツは大変ではありませんか?」

「大変だなんて言ってられません。人は働いて食べていかねばならないのです。それに、私はまだ500社しか落ちていませんが、友人には1000社落ちた人もいるのですから」

私は失礼を承知しながらも、問わずにはいられなかった。

「他の国では「労働」という概念自体がなくなっているのに、この状況はおかしいと疑問を抱かないのですか?」

彼女は運命を甘受した者の如くこう答えた。

「外国は外国、私たちは私たち」


この国の街は昼夜を問わず喧騒に包まれている。怒鳴り声。喚き声。クレーマーや迷惑客の声である。連中は「過酷な環境」を提供して労働者の「成長」に貢献している功績が認められ、無形文化遺産に登録された。つまり「四大遺産」の最後の一つになっているのである。そのため現場への技術の導入は限定され、いまだに人が最前線に立ち、クレーマーや迷惑客との格闘を繰り広げている。私も買い物をしているとき、以下のような場面に遭遇した。

「おい、どういうことだ!外国にいったときは、このカード持ってりゃ自動で会計してくれたぞ!」

「お客様、大変申し訳ございませんが、当店ではそうした仕組みを採用しておりませんので、お客様の行為は万引きということに・・・」

「バカヤロー!!万引きなんて犯罪が残ってるのはこの国だけだ!!お前、こんなことでオレを犯罪者にするつもりか!?」

私はお会計の際に店員に尋ねてみた。

「こうしたことばかりで、つらくないのですか?」

店員は何事もなかったかのように落ち着いて答えた。

「給料を貰っているので」


この国では「働いて食べていく」という表現がよく使われるが、かといって労働者はカネのために働いているのではない。給料のために働いているのであり、同時に給料を貰っているから働いているのである。「給料」は「カネ」ではない。「カネ」以上の意味を持った神秘的な概念である。たとえば「給料を貰っているからきっと役に立っている」とは言えても、「カネを貰っているからきっと役に立っている」とは言えない。「給料を貰って食っていく」ことは善であり、「カネを貰って食っていく」ことは悪である。「給料を貰っているから」理不尽を我慢することが当たり前になるのであり、「カネを貰っているから」そうなるのではない。「給料」に何か大きな秘密があることは確かなのだが、その秘密は勤勉な労働者たちにしかわからないのである。

外国人観光客はある種の境地に達しているこの国の人々を見て、口々に称賛の声を上げる。
「キンベンの精神、憧れます」
「私はこんな努力できませんよ」
「これがサトリですね」
しかし、観光客のリピート率は驚くほど低い。それもそのはず。外国人観光客は称賛の後こうも言っているのだ。
「この観光以上に戦慄することは、私の人生できっともうないでしょう」
「好奇心から訪れましたが、ここは軽い気持ちで来ていい場所ではなかった。後悔しています」
「絶望・・・そう、これこそが「絶望」の意味に違いありません」
中には涙を流し、取り乱す者もいる。
「そんな・・・そんな・・・こんな悲しいことが・・・いや、みなさん喜んで・・・でも・・・でも・・・ああ・・・もういい・・・もう十分です・・・早く、早く帰りたい」

こうした反応を伝えてみても、観光名所の一つであるX社の担当者は非常に前向きであった。

「私たちはまだまだ労働力を引き出せますよ。センサーを増やし、監視ロボを増やし、薬も増やし、笑顔・挨拶まで徹底する。「勤勉の精神」をさらに高める。有り難いことに、技術の進歩は目覚ましいですからね。この新薬なんて凄いですよ、睡眠なしで200時間集中力を維持できます。さらに今開発中のナノロボット、あれは本当に素晴らしい。少しでも労働から関心が逸れたらたちどころに検知し、即座に修正してくれるのです。ははは、任せてくださいよ。今以上に活力のある職場をつくり、必ずや外国人観光客のみなさんの期待に応えてみせますから」


ポジティブマンとネガティブマン

ポジティブマン「はたらきたくないな」

ネガティブマン「おい!いきなりそういうネガティブな発言するなよ!こっちまでネガティブな気分になるだろ!」

ポジティブマン「そんなわけないでしょ」

ネガティブマン「よぉ~し!明日からも労働、頑張るぞ~!」

ポジティブマン「きょうせいろうどう、もういややわ~」

ネガティブマン「だからさぁ!というか、これ、名前間違ってるよね!?なんでぼくが「ネガティブマン」なんだよ!」

ポジティブマン「君、奴隷、って言われたらどう思う?」

ネガティブマン「はあ?怒るに決まってるだろ」

ポジティブマン「君、生涯賃金、ってどう思う?」

ネガティブマン「別に何とも思わないよ。まあ、非正規との差をみると、正社員で良かった~とは思うけど!あはは」

ポジティブマン「人生をカネに換算されても、何とも思わないんだね。それどころか、自分から進んで換算して、喜びさえするんだよな」

ネガティブマン「なんだあ?」

ポジティブマン「まっ、奴隷じゃないよね」

ネガティブマン「そりゃそうだ。たまに「オレは奴隷だ」とか自己卑下してる奴いるけど、ほんとダサいよ」

ポジティブマン「ほんとにね。そういう人たちも、同じように勘違いしているからね」

ネガティブマン「も、って?」

ポジティブマン「ぼくらは、景気や他人の欲望みたいな気まぐれに自分の生活を依存しているのに、平気でいる。それどころか「お金持ちの人にもっと消費してもらわないと!」なんて言って、金持ちの欲望に振り回されることを望む人までいる。限られた賃労働のイスを奪い合う競争に強制参加させられ、ひどい目にあっても、我慢する。これじゃもう、誰が見ても、現代人は家畜だもんね」

ネガティブマン「いい加減にしろよ!」

ポジティブマン「さっきの自己卑下は「会社の奴隷」って意味だよね。まあ、これも正しいかもしれないけど、それ以前にぼくらはカネの奴隷になっている。所詮自己卑下は自己卑下、我慢するための手段。「自分が奴隷である」ってことを真剣に悩もうとしないのだから、その人も君も同じだよ」

ネガティブマン「ちょっとは言い方考えろよ!お前は奴隷だ家畜だって言われて、喜ぶ人間がいるはずないだろうが!」

ポジティブマン「そこなんだよ。ぼくは君を怒らせたかったわけじゃないんだ。だから「お前は」じゃなくて「ぼくらは」なんだよ。ぼくらは実際にそうなっているってだけの話なんだから、喜ぶとか、怒るとか、そういうことではないじゃない」

ネガティブマン「なくないよ!怒るに決まってんだろ!」

ポジティブマン「うん、大抵の人は怒るんだけど、どうして?ぼくらが奴隷である、家畜であるって、実際にそうなっているってだけの話じゃない」

ネガティブマン「誰だって嫌な現実を突きつけられたら怒るんだよ!そんなこともわかんないのか?」

ポジティブマン「だから君は「ネガティブマン」なんだよ。実際にそうなっているんだから、まず認めないとどうにもならないだろ。日頃から「前に進む」とか、一見ポジティブなことを言っているけどさ、どんなことにせよ、いざ「前に進む」チャンスがきたら、全力で拒絶して嫌な現実を我慢するっていうその瞬間最も楽で快適な道を選ぶんだ」

ネガティブマン「いやね、それは言い方が悪いから」

ポジティブマン「君はね、根本的な部分があまりにもネガティブなんだよ。だから、実際にそうなっていることでも、認められない。これを認めたら大変なことになると思い込んで、怯えてさ。たとえば、ここは地獄だって言ったら、君はどう思う?」

ネガティブマン「そんな風に考えちゃ絶対ダメだと思う」

ポジティブマン「けど、だから何だろう?ここは地獄。生きても苦しいことだらけ。絶対的に孤独。永遠に独りぼっち。けど、だから何?どれもこれも、実際にそうだって話でしかない。人はこの泥のような世界で無意味に泳ぎ続けるだけの憐れな存在って言われても、ぼくは特に何とも思わないよ。だって、実際にそうなんだもん。思っても、そうだね、つらいね、悲しいね、ぐらいかなあ。まあ、しつこく言われたらさすがにムカつくけど」

ネガティブマン「そんな考えになったら、何も楽しいことがなくなるじゃないか!」

ポジティブマン「実際にそうなっているってだけの話なんだから、考えなんて関係ないんだよ」

ネガティブマン「訳が分からない。そんな風に考えるお前の方が、絶対にネガティブだろ」

ポジティブマン「まっ、それでもぼくは、世界は素晴らしいと思っているけどね」

ネガティブマン「矛盾してないか?」

ポジティブマン「だから、実際にそうなっていることと、自分の考えは、関係ないんだよ。どうやら根本がネガティブな人はここがわからないらしい。もし万が一実際にそうなっていることを実際にそうなっていると認めてしまったら、「こっちの世界」に帰ってこれなくなると思っている。過去も現在も未来も、自分の人生が全て崩壊すると思っている。やってみればわかるけど、全然そんなことないよ」

ネガティブマン「信じられないね」

ポジティブマン「実際にそうなっていることは、自分がどう考えようが、実際にそうなっていること、でしかない。奴隷がいくら自分は奴隷じゃないって考えたところで、実際に奴隷であることは何も変わらないじゃないか。君は「今の自分の気持ち」のために家畜になるのと、奴隷をやめるのと、どっちがいいの?」

ネガティブマン「なあ、必死に働いて、貢献して、明日も頑張ろうって自分を鼓舞することが、そんなに悪いことなのかなあ?」

ポジティブマン「悪いことだよ。だって、君は逃げただけじゃない。逃げて、逃げた者同士、嘘に嘘を重ねて、さらに他の人にも嘘を広めているんだよ。その結果、どうなる?みんなで嘘をつき続ければ、何か変わるのかい?つまり、君は負担を全て他の誰かに丸投げして、逃げたんだよ。逃げて、嘘をついて、我慢して、嘘を広めて、その負担をさらに大きくしているんだ。こんなことをやり続けているんだから、君の「貢献」の分なんて、軽く吹き飛ぶと思わないかい?」

ネガティブマン「逃げ、嘘、別にいいもんね、ぼくはそういうネガティブな考え方をしないからさ。ぼくらが奴隷だなんて、ありえないから、そんな妄想する方がネガティブなんだよ。嘘つきはそっち。働いて、貢献するのは、人としての義務だから、みんなそうしてるんだもん。それが悪いことだなんて、ありえないね。世界は、今が一番、一番の仕組みなんだから、変える必要なんてない。悪いのは、こういうことが分からない、ネガティブな連中だよ。ネガティブは伝染するから、ポジティブな人とだけ付き合えばいいんだもんね。ばいばいさよなら」

ポジティブマン「ぼくらは、実際にそうなっていることを受け入れず、我慢することを受け入れる。必要なことを受け入れず、不要で有害なことを受け入れる。結果、今を生きる他人と未来に生まれる他人を、犠牲にする選択を毎日し続けている。我慢することで加害者になるのに、その我慢でもって全て許されることにして。それを忘れないことだね」


人間は商品ではありません、労働者です

~お知らせ~

みなさまご存知のように、当世界における人間とは、賃労働をして生きる存在であります。つまり、みなさまは一生を労働者として送るわけであります。そこで、みなさまの労働者ライフの質を向上させるため、「労働者としての価値」すなわち「労働力」を数値に換算し(※)、名前の代わりとすることが決まりました。とはいえ、みなさまはあくまでも労働者であり、商品ではありません。我々はその点を決して忘れることなく、より快適な労働者ライフ実現のため尽力していく所存であります。制度の変更に伴い様々な混乱が予想されますが、どうか新しい制度の必要性をご理解いただき、ご協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。

(※)「労働力」は能力ばかりでなく、日頃の行いや思想・信条も加味し、全人格的に判断いたします。


「なんだい、これ?」

「さあ。朝きたときにはもうあったんだよ」

「どういうことだ、「労働力」って?」

「現代社会において人間は商品にすぎない、ってことじゃないの?」

「冗談じゃない。いよいよ完全に奴隷にするつもりか」

「人間は商品じゃない!奴隷でもない!労働者だ!」

「おいおい」

「何言ってんの?」

「そういうの、好きな奴だけでやってもらえるかな?」

「その通りであります!人間は商品ではありません、労働者です」

「なんだ、このロボット?」

「私は「労働力」測定ロボ。早速みなさんの「労働力」を測定いたします。あなた、50万!あなた、20万!単位は「円」であります」

「ふざけるなよ!人間をカネに換算するなんて何考えてんだ!」

「ちなみに「ひと月当たり」であります」

「おい!なにが「労働力」だ!これじゃ完全に商品じゃないか!奴隷の競売だ!」

「あなた、5万!」

5万「きいてんのか!」

「おい、5万!うるせーぞ!おとなしく言うことをきけ!オレたちはなあ、一生働らい・・・働かせていただき、お給料として生活資金をいただくんだ。これが当然、人間としてあるべき姿。ということは、つまり「労働力」は「人間の価値」そのもの!それを具体的な数値として、教えていただける。我々としても、これによって目標・計画を立てやすくなるんだ。それなのに「奴隷の競売」なんてイチャモンつけやがって!少しは有り難いと思え!労働者の味方のみなさん、お心遣いありがとうございます!」

「あなた、100万!」

おぉ~~~~~~。

100万「どうだ!報われたぞ!オレの努力が報われたんだ!」

50万「おい、みんな騙されるな。奴隷に値を付けるような制度、許していいわけないだろ。それに、この数値、おかしいぞ。明らかに思想・信条が・・・」

100万「人間はみな労働者!なのに、労働者が商品?奴隷?となると、人間はみな商品、人間はみな奴隷、ということになってしまう!なあ、みんな、こんなバカな話がありえるだろうか!?」

「あなた、25万!あなた、105万!」

105万「わはははは、おい、25万!システムに盾突くなんて、労働者としての自覚が足りないんじゃないか?素直に謝った方が、身のためだぞ?」

25万「はあ?」

105万「あ~あ、一気に半分になっちゃった、おっきいよな~、将来のこと考えたら、困るよな~」

25万「ぐっ・・・うぅっ・・・素晴らしい・・・制度を・・・ありがとうございます」

「あなた、30万!」

105万「ふふん。5万も戻していただいたんだ、ちゃんと感謝しろよ。ところで20万、さっきから黙ってどうした?ええ?お前はこの制度、どう思うんだ?」

20万「ぼくは・・・ぼくは・・・」

5万「おい、タカシ!お前はタカシだ!20万じゃない!」

105万「ちっ、おい、5万!お前、そんな「労働力」で人間として恥ずかしいと思わないのか?一体、今まで、何してたの?なあ、20万、お前はどう思う?」

20万「ぐっ・・・ぐっ・・・ご、ご、5万なんて・・・信用できません!5万という数値は、よほど努力を怠ってきた証拠!人間として・・・人間として、何の才能も、価値も、無いのでしょう!」

「あなた、25万!正社員ラインに到達!」

105万「やればできるじゃないか!お前も、これからは正社員側の人間として、しっかり自覚を持つように」

「はいは~い、求人のお知らせで~す。誰か、月3万円で働ける人、いませんか~?めっちゃきつい仕事になりま~す。未経験者、大歓迎ですよ~」

105万「おい、5万、いけよ」

5万「なんだと?」

105万「はあ~、お前、人手不足の今がチャンスだってこと、わかんないの?だから、5万なんだよ。未経験者歓迎って、5万の人間に、こんなチャンス滅多にないよ?少しでも自己分析したことある?自分の立場わかってる?いいか、投資だよ、投資。お前、「労働力」を高めるために投資しなかったから、今こうなってんじゃん。働いて、スキルを身に付けないと、いつまで経っても「労働力」上がんねーぞ?いいか、働かないと「0」、いや、無為に年を重ねる分「マイナス」なんだよ。これと3万円分のお仕事をさせていただいて「労働力」を高めるのと、どっちが合理的だ?」

25万「将来どうするつもり?5万のままじゃ、キャリア形成できないけど、大丈夫なの?」

30万「君は、3万円の投資チャンスをみすみす見逃すのかい?それじゃ将来困るんじゃないかな?カネ稼げないと、やってけないぜ?食費は?家賃は?税金も、社会保険料も、どうするつもりだい?」

105万「そうだ!5万が死んだところで、社会的にはせいぜい5万円の損失!なにより5万なんざ掃いて捨てるほどあるんだから、取るに足らん!しかし、最低限の義務を果たさず、世間様に迷惑をかけるとなると、その損失は一体どれほどのものになろうか?働いて食っていくという人としての義務を放棄し、税金にたかり、一生懸命働く人の足を引っ張る行為は、社会にどれほどの損失をもたらすだろうか?」

「あなた、110万!」

・・・・・・

「次のニュースです。5万が長時間労働を苦に自殺し、それが過労による自殺と認定されました。なお、5万は月3万円で働いており・・・」

25万「経営者だ!経営者が悪いんだ!」

30万「ちくしょう!労働者を使い潰せば、会社は簡単に儲けられるんだ!」

110万「法律に違反する経営者を許すな!労働者を大切にしない会社を許すな!」

「はいは~い、求人のお知らせで~す。誰か、月2万円で働ける人、いませんか~?めっちゃきつい仕事になりま~す。今の生活を続けていくにはあなた方が必要って言ってくれる人はいっぱいいるけど、みんなおカネないって言うから、やむを得ず人件費を削ったよ~。未経験者、大歓迎ですよ~」

110万「おい、25万、いけよ」

25万「ええ!?」

30万「君、無職だもんね。人手不足のチャンス、2万円の投資チャンス、逃していいの?そういう消極性、「労働力」にも反映されてくるんじゃないかなあ。空白期間をいたずらに長引かせれば、君の「労働力」はどうなってしまうだろう?」

25万「うっ・・・うっ・・・」

「あなた、15万!」

30万「泣いてる場合じゃないぞ!君の年齢で15万、これが最後のチャンスなんじゃないかな?」

15万「がっ・・・がっ・・・ゲホ、ゲホ」

「あなた、5万!」

110万「おい、5万!吐いてる場合じゃないぞ!そんな「労働力」で、将来どうすんだ!世間様に迷惑をかけて生き延びるつもりか!よし、お前がその気なら、オレが世間様のお声を代弁してやる!「働かない言い訳を作っている暇があったら、素直に頭を下げ、働かせていただけ!やっすい、ゴミクズ程の命のために、大切な税金を無駄遣いするなんて、ありえないんだよ!!」」

5万「うっ、うっ、うわああああ!!」

30万と110万「すすめ!すすめ!すすむのだ!!」

5万「ススメ。ススメ。ススムノダ」

・・・・・・

「次のニュースです。・・・・・・」


プロフィール

Author:遊民
読みたい本が山積みなのでニートしてます。

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