自己紹介ではない自己紹介

                警告ではない警告

当ブログ、twitterには「賃金奴隷」「労奴」「カネの奴隷」「強制労働」「労働教」といった言葉が登場します。こうした言葉に怒りを抱く方や、「働くのは当たり前」といった思想・信条をお持ちの方は、すぐにブラウザを閉じ当ブログの存在を忘れるのも良いですが、せっかくなのでちょっと見てみるのも良いかもしれません。一方、こうした言葉に興味のある方や、拒絶反応を起こさない方は、ぜひ当ブログを見ていってください。共感なり、気づきなり、明日を生きる励みなり、何かしら得ていただけるよう、私は精進していく所存であります。



毎日、きつい。毎日、苦しい。悲しい世界。

労働者は、毎日失業の恐怖に怯えている。失業者は、生活の糧を失い途方に暮れている。子供も、若者も、大人も、いつ切れるともしれない、薄っぺらで、儚く、しかしそのくせある種の強制力を持った「つながり」の中で、孤独を抱いている。生活を人質に取られても、誰にも頼れず、独りぼっちで、賃金を得に、労働市場へ赴く。恐怖と孤独に苛まれながらも、「生活保護」をエサに、「敵」との競争を強いられている。

それなのに、人々は「保護の充実度」に意識を集中させ、優劣を持ち込み(「あいつ、非正規なんだってよ!」)、意味を見出し(「それだけ社会に貢献しているんだ!」)、いただいた「(賃金奴隷としての)身分」に執着・愛着を抱き、ときには「生活を守る」などと使命感さえ持って奴隷状態を正当化する。

「みんなが頑張って働いているから、今の豊かな生活があるんだ」

こうした考えは、その人間が精神的にも賃金奴隷となってしまった証でしかない。モノは余っているのに、賃金分配。技術は日々進歩しているのに、賃金分配。「賃金分配」というドグマへの執着。それによって生じる「人力」信仰。「行き過ぎた進歩」・「過剰な便利さ」、進歩や利便性よりも、賃金分配。人々の積み重ねを台無しにしても、賃金分配。現役/将来世代を犠牲にしても、賃金分配。「みんなが頑張って働いている」だけだから、賃金分配。

人間は生活を人質に取られないと、何もしないのだろうか。カネの奴隷にならないと、他人のために何かしようと思わないのだろうか。強制されないと、頑張ることもできないのだろうか。人間観までもが奴隷のそれと化してしまい、あまつさえ自明性さえ獲得し、制度・教育・日常生活を通して無意識のうちに再生産されていく。

「どこにお勤めでしょうか?」

枷を見せ合い、互いに「身分」を確認し合う儀式。

「賃金を上げろ!残業を規制しろ!」

末永く奴隷をやらせていただきたいのでもっと優しくしてください、情けない服従宣言。

「保育園落ちた日本死ね!」

労奴を続けたいから子供を預かれ、倒錯した怒り。

自分で自分の首を絞めているのに、気づかない。苦しみたいから苦しむけど、苦しいから苦しいのはもう嫌だ。原因帰属の錯誤によりドツボ。

いただいた「身分」を誇示し、悦に入る。お仕着せの娯楽と流行で、カラカラ笑う。無意味で無価値で滑稽で、無力で虚ろで閉塞するだけの日々。強いられる空虚な生、強いられる空白の時間。人生を換金するだけの日々、換金のための「自己投資」をするだけの日々、換金のため休養するだけの日々。今日も至る所で、前向きな歌詞の流行歌が流れ、前向きな言葉が持て囃され・・・・・・。

耐え難い空虚さ(そんなことより恋愛しようよ!)

圧倒的な無力感(一生懸命やってれば元気が湧いてくるさ!)

底無しの滑稽さ(ごちゃごちゃ考えてないで、目の前のことを全力でやろう!)

どす黒い閉塞感(希望を持って、働こう!)

ここは地獄だ!(ここは天国だよ!)

学びも、活動も、全てが「賃労働」に通ず。能力も、人格も、全てが「賃労働」に通ず。労働市場に強制参加、そして賃金に釣られて、くるくる回る。くるくるくるくる、たのしいな、たのしいね。

どうしようもない。

毎日、きつい。毎日、苦しい。悲しい世界。

                要約ではない要約

私はニートをやっています。悲しい世界について、「考察」したり、「おはなし」を書いたりしています。週一で更新します。よろしくおねがいします。

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なくしもの

もしもし お天道様に導かれて辿り着いた世界で
しあわせ はみつかりましたか?

ねえねえ 知ってる?
光は ピカッと光って 人を騙そうとするんだけれど
影は ピタッとくっついて 嘘を教えてくれるんだよ

わはははは 違いない!違いない!
するとつまり 騙されたくなかったら 抜け目なく影をみていればいいってわけだ

そうだよ 影が歪にうねっているのをみつけたら
光がどんなに魅力的に光っていても 一目散に逃げるのがいい
ここだけのはなし
光は 歪な現実をみせないために ニンゲンが発明したんだ

それが本当なら ニンゲンってやつぁとんでもないなぁ

怖いな 怖いな ニンゲン怖いな
うわ~ん と泣き崩れる声も
しくしく とすすり泣く声も
もう届かないから
みんな 寂しく 独り泣く

誰かを傷つけたくなくて
誰かに傷つけられたくなくて
けどね そういう人は 死ぬしかないんだってさ
マネー マネー マネーで今を生き延びろ

死ぬのが嫌なら鬼になれ!
やられる前に噛み殺せ!
怯えるぼくを置き去りにして
きみは 強いニンゲン になった
マネー マネー マネーが過去を浄化してくれるさ

視界がぼやけ 目の前が遠ざかったり 近づいたり
動いてないのに 左右に揺れたり
夢か 泥酔か
ことわりを忘れ ときを忘れ

混濁に身を任せると
ヒト ヒト ボク キミ
お馴染みの光景が広がる
ヒト ヒト ボク キミ
酒を飲んで 手を叩く
ヒト ヒト ボク キミ
中空に視線を漂わせ
ヒト ヒト ボク キミ
笑い合う
アハッ アハッ アハッ アハッ
夢か 泥酔か
気が付くと 数枚の紙切れを握りしめているんだ
夢か 泥酔か
とりあえず かんぷぁ~いしよう
マネー マネー マネーで未来も忘れられるさ

だって仕方がなかったんだよ
弱いヤツは もそもそ動く 芋虫のように
指ではじかれ 転がされ 箱の片隅に押しやられちまう
芋虫同士 重なり合って 窒息するかもしれないし 潰されちまうかもしれない
そんな惨めで無様な死に方 したくないだろう?
許してよ 昔のことは水に流そう? ねっ、このマネーでさ
信じてくれて感謝してるよ
けど そっちにも非が無い とは言い切れないだろう?
ちょっと 不用心だったんじゃないかな?
信用に付け込み 付け込むことに付け込み 付け込むことに付け込むことに・・・・・・
いい子ぶってないで悪に染まれよ!

何がきみにそうさせたのか?

ねえねえ 知ってる?
影をジッとみていると ニンゲンがみえてくるんだよ
パクッと開いた 大きなお口から
うあうあと漏れる悲しい声 大丈夫?泣いているの?
お口の中には ありゃ? 笑顔!
お手手は にゅるりと 蛇の頭!
わぁ もう 逃げられない

何がきみをそうさせたのか?

きみはキミにきみを奪われ
きみはキミできみを穢して
情を嘲り
痛みを分かち合うことさえ できなくなって

金ぴかの笑い声で我に返る
我々の進歩の光で 大いなる繁栄へと 人類を導こう!
これが 我々の使命!
ビジネス ビジネス 万事ビジネスで解決すればいいさ

私は一切の罪もなくただ純粋に社会貢献を志向するのみの善人であります
とでも言いたげな
狂信者特有の自信と熱気に満ちたツラを下げた連中で溢れかえった会場にて
スタンディングオベーション
どいつもこいつも ヘラヘラ ヘラヘラ

嘘を嘘で隠し
傷を傷で覆い
罪を罪で贖う
そんなあんたらの価値が普遍?真理?正義?

安息を壊す収奪の論理
人心を穢す侵略の合理
陰鬱なだけの諸々の自由に
慈悲を遺棄する命法も一緒で
眩い思想にされるがまま
抑えつけられ
圧されて
声も届かず 消えてゆく
見向きもされず 消えてゆく


「病んでる」ってなぁに?

「はじめまして。職場の人たちから「病んでる」との批判らしきものが絶えず寄せられるため、本日は相談させていただきたく参上しました」

「なるほど。職場の方たちとうまくやっていくため、病んでる状態から脱却したいということでしょうか?」

「いいえ、今のままでうまくやっていきたいのです」

「病んでるという自覚は?」

「あります」

「それなのにどうして病んでる状態から脱却したいと思わないのですか?」

「人間として生きたいからです」

「それはどういう?」

「そもそも「病んでる」と何が困るのですか?」

「何がって・・・・・・批判されるということは、職場のみなさんが何かしら困ってらっしゃるということでしょう。つまり、病んでることでみなさんに迷惑をかければ、お仕事に支障を来すわけで」

「なぜみんなは眠い目をこすって起きたくもない時間に起きるのでしょうか?なぜみんなは申し合わせたように同じ時間に電車に乗って苦しむのでしょうか?なぜみんなは興味の欠片もない業務をこなし続けるのでしょうか?なぜみんなは下げたくもない頭を下げるのでしょうか?なぜみんなは残りたくないのに会社に残るのでしょうか?」

「あのね、それが社会でやっていくってこと、働くってことなんですよ」

「私は「人間」として生きたいのであって、「労働者」として生きたいのではないのです」

「はあ、そういうことをおっしゃるから、病んでると批判されるのでは?」

「確かに私は「病んでる」のでしょう。ただし、それは労働者としてであって、人間としてではない」

「どういうことですか?」

「幼少の頃から「教育」され続けるからでしょうか。みんな知らず知らずのうちに人間であることを忘れ、労働者と化してしまうのです」

「なるほど、確かに病んでる。あなたは色々と気にしすぎなんですよ。今の仕事としっかり向き合い、周囲からも認められるようになれば、そうした考えもなくなりますよ」

「人間は 本来世界と一つであった
それなのに どうしてわざわざ切り離す?
手にしたものといえば 
「個人主義」なる名目の 孤立と無縁と孤独のイズム
「自己」なる空虚な概念に 生存と承認の絶えざる欠乏
こうして人は「労働者」と化した」

「これはまずい、非常にまずいですよ。まさに認知の歪みと言わざるを得ない。労働者のことをバカにするどころか、何か訳の分からない存在であると信じ込んでしまっている。よくない、よくないですよ。人は働いて、社会に参加し、認められ、それで生きていくものなのですから」

「労働者として歪んだ認知は、人間として正しい認知。労働者として「病んでる」ことは、人間として正常な証」

「認知の歪みがもたらす過大なストレスによって視野狭窄に陥り社会規範から逸脱した二分法に囚われ周囲をも巻き込み批判が寄せられこの段階に至ってようやく「病んでる」との認識に到達し治療を決断したと」

「やはり労働者にならないとやっていけないのでしょうか?」

「気になるのは、あなたが自分のことしか考えていないことですね。みんなの気持ちも考えずに、そうした自分勝手な思想に囚われ、みんなに迷惑をかけている。ここまで逸脱した思想に染まってしまいますと、あなたが意識しようがしまいが、一生懸命働く人が不愉快になるような言動を自然ととってしまうのでしょう。ですから、そうした歪みを正し、働く喜びを素直に感じられるようにならないといけません」

「なぜ人は仕事があると喜ぶのでしょうか?」

「仕事があるのは善いことだからです」

「仕事があるということは誰かが欠乏してるってことですよね?」

「その欠乏を満たして差し上げるのが仕事ですよ?これ以上喜ばしいことがありましょうか?」

「欠乏がないのが一番善いのでは?」

「そうなったらみんな生きていけません」

「常に誰かが欠乏して苦しんでいないとみんなが生きていけなくなるのですか?」

「そうやってネガティブな見方をする。わかりますか、それこそが認知の歪みなのですよ」

「人間であれば他人の欠乏を「満たしたい」と思う。労働者であれば「誤魔化したい」と思う。人間であれば他人の苦しみを「癒したい」と思う。労働者であれば「機会にしたい」と思う」

「さて、まずは仕事での成功体験を思い出してみてください。働いていて「やりがい」を感じたことはあるでしょう?そのときの純真なあなたに戻るのです。みんなと協力して、きついけど楽しい。みんなに認められて、嬉しい。そんなエピソードをここに書き出してみましょう」

「生活リズムは労働が決める。今日何をするかは労働が決める。他人との関係は労働が決める。過去も未来も労働が決める。世界から切り離された「自己」の核となるのは、「人間としての自分」ではなく「労働者」。身も、心も、魂も、思考も、「労働者」に合わせよ。「労働者」に委ねよ。「労働者」に没入させよ。そして「労働者」と化せ。労働に奉仕しない思想・信条・行動は悪だ。労働のために人間としての感情を押し殺せないことは悪だ。けれど、私は、人間として善でありたい」

「それなら立派な労働者になるしかありませんよ」

「みんなそう言って、私を「労働者」に押し込もうとする」

「みんなあなたのことが心配だからですよ」

「どうして心配なのですか?」

「そのままでは社会でやっていけないからです。つまり、あなたが将来困ることになるからです」

「将来困らないためには労働者になるしかないのですか?」

「当然でしょう」

「獄卒が」

「被害妄想です。だって、みんな本心から心配しているはずですから」

「人間でありたい者を労働者に変えることは、人間として善いことなのでしょうか?」

「治療がうまくいけば、もちろんあなたも嬉しいし、職場のみなさんも嬉しい。それで私も嬉しい。これが善いことか悪いことかは、みんなに聞けばわかります」

「タダで人を助けることは、労働に奉仕しない無駄だから悪。人の死を「仕方ない」で済ませることは、労働に奉仕する切り替えだから善。経済的理由で人が死ぬことは、「自分じゃなくてよかった」と労働意欲を高揚させるから善。労働者に従い、善悪は労働に委ねよ」

「働くことに対していつまでもネガティブでいたら、前に進めませんよ」

「人間を殺し、労働者にする。人間としての罪は、しかし労働者としての善なのである。人間としての善は悪と裁かれるか、あるいは偽善と罵られ、悪は善と称賛される。それでも、人間として、せめて人間として・・・・・・アハハハハハあぁ、あぁ」

「なに?なに?一体どうしたの?」

「たのしいな たのしいな 人間殺すの たのしいな
 うれしいな うれしいな 人間死んで うれしいな」

「やめなさい!」

「そうでしたね、立派な労働者はちゃあ~んと人間のフリができなきゃぁいけない。
 くるしいな くるしいな 人間殺すの くるしいな
 かなしいな かなしいな 人間死んで かなしいな
アッハッハー」

「入院だ!独善的な妄想の世界に引きこもっていて、何をしでかすかわからないぞ!」

「みんな 泣いている」

「いいですか、認知の歪みによるストレスが思考を蝕み、そうした妄想を生んでいるのですよ。みんな泣いてなんかいない、みんな笑っています、笑って生きているのです」

「目に涙をためると 世界がボンヤリみえる
 涙の膜が心をちょっとだけ守ってくれるから みんな泣いている
 人間のみんなは泣いている 労働者のみんなは笑っている
 ボンヤリした世界に 成長と充実を見出して
 嬌声をあげ 跳ね回る
 人間のみんなは 泣いている」

「鎮静剤をはやく!」

「人間を労働者に変えることが善か悪を為したくないと思うことが悪か傷つけ合い殺し合いで毎日が充実しているか他人の痛みを機会と喜べることが正常か他人の不幸を優越と笑えることが正常か人間としての終わりが誇らしい成長か「病んでる」と茶化してへらへらへらへら笑って矛盾から逃げ回ってんじゃねぇよトチ狂った人間モドキ共がぁぁぁぁぁ」

「大変だ!人間をニセモノと思い込む妄想が出現したぞ!」

「さあさあ みなさん ご一緒に!
 我が内なる「労働者」様から賜りました有り難きおまじないにござります!
 
心を殺せ 心を殺せ
 
心を殺せ 心を殺せ
 
こ こ ろ を こ ろ せ」

「だ、誰に向かって言っているの?」

「貴様に言ってんだよ、おい
き さ ま にいってんだよ」


親資格審査会

「本日はご足労いただきありがとうございます。もうご存知のことと思いますが、当審査会は、「人類の繁栄に貢献しうる子供を育成するにあたり、なによりまず子供を残すに相応しい親を選別せねばならない」という問題意識の下で設置されたわけであります。したがって、この面接におけます目的は、「あなたが親の資格を与えるに値するか」を判断することであります。それでは、よろしくお願いします」

「はい、よろしくお願いします」

「あなたは子供をお望みでしょうか?」

「はい」

「あなたは何か「障害」をお持ちでしょうか?」

「いえ、私は「健常者」であります」

「わかりました。それでは「健常者」枠での審査ということですね」

「え?そういった「枠」があるのですか?」

「我々は遺伝子と環境の相互作用を重視しておりますので」

「はあ」

「「健常者」だけが子供を残す資格がある、なんて考えていましたか?」

「い、いえ、そのようなことは・・・」

「まあ、いいでしょう。なぜ子供を残したいと思ったのですか?」

「はい、私はこの世界に生まれ・・・・・・数々の困難を乗り越え・・・・・・・様々な人に助けられ・・・・・・幸福を感じ・・・・・・生命をつないでいくことの大切さに気付き・・・・・・幸福を子供にも感じてもらいたい!この素晴らしい世界に是非生まれてきてもらいたい!そう思ったのであります」

「熱弁ありがとうございます。要するに「世間体」ということでよろしいでしょうか?」

「そんなこと一言も言ってませんよ!」

「そうですか。いや、ね、事前にさせていただいた身辺調査によりますと、あなたは結婚して子供を持つのが一人前の証であり、それができない人間は問題があるとの思想をお持ちのようでしたので」

「そんな調査聞いてないよ!」

「聞いていたら調査の意味がないので。子供にはどんな大人になってほしいですか?」

「え、ああ、人さまのためにきちんと働いて、社会に貢献できる大人になってほしいですね」

「自分は強制労働制の社会に生きている、という認識は?」

「いや、強制労働って・・・・・・あのぉ、失礼ですが、他の方に面接していただくことはできないでしょうか?」

「なぜ?」

「だって、強制労働って・・・・・・あんまりじゃありませんか?」

「他の者に代わってもかまいませんが、誰がやっても同じことを言うはずですよ」

「そんなはずないじゃないか!あなた、相当偏ってる自覚あります?」

「詳細は明かせませんが、我々はある基準に沿って面接官に選ばれているのです。したがって、細かい点に違いはあれど、こうした重要な部分では認識を共有しております」

「そんな・・・」

「逆に、強制労働制じゃなかったら、何なのです?」

「いや、だからといって・・・」

「現行制度の下において、あなた方は、「人間」である以前に「労働者」なんですよ。このことの意味・重大性、わかってます?」

「わかりませんよ!一体何がどう問題だっていうんだ!」

「「人さまのため」を目指したところで、それは「労働者のため」にすり替わり、高尚な志はいつしか「働かせるため/我慢させるため/現実を忘れさせるため」に変質し、結局は「労働のため」に収斂する。モノも、サービスも、教育も、技術も、制度も、支援も、全て「労働のため」に収斂する。あらゆる労働が「労働のための労働のための労働のための・・・・・・」という環に取り込まれる」

「ふざけんな!面接でどうしてそんなこと聞かされなきゃならないんだよ!おい、私がやってることは全部無駄ってか!?」

「そうは言っていません。私が申し上げたいのは・・・」

「じゃあ日々私がやってることは全部嘘っぱちってことか!?みんなの笑顔は全部嘘っぱちってことか!?」

「さあね。ただ、自分たちは「人間」である以前に「労働者」であるという認識はちゃんと持ってくださいね。「人間」ではなく「労働」に奉仕している認識も。なにより「人間中心」ではなく「労働中心」の世界に子供を放り込むことになるという認識を・・・」

「あんた・・・・・・あんた・・・・・・あんたなぁ!放り込むってのはどういうことだ!ええ!?国民をバカにするのが役人の仕事か!?子供に幸せになってほしいとか、強く生きてほしいとか、そういうみんなの思いはどうなるんだ!」

「それはあなたの勝手な妄想でしょ」

「勝手な・・・・・・妄想・・・・・・?」

「あなたの「願い」や「思い」など、この世界に放り込まれる子供には関係ありませんから。あなたが何を願おうが、子供は穢れる以外にない。あなたが何を思おうが、子供は奪われる以外にない。ところで、ここに来る途中で「何かの間違いだ」と絶叫し、人差し指を立てながら凄まじい形相で首を振る人々に出会いませんでしたか?」

「ああ、いたよ!いましたよ!」

「あの人たちは審査に落ちた人たちです。不正防止のため、当審査会についての不満等を語る際には全て「何かの間違いだ」に変換されるよう処置してあります」

「これをぶら下げてたから、面接を受けた人だってのはわかったよ!くそっ、だからなんだって言うんだ!」

「本人たちとしては、贖いのつもりなのでしょうね」

「贖い?」

「もし落ちたらあなたはどうします?」

「受け入れるよ!どんな結果でも潔く受け入れますよ!」

「落ちた人たちもあなたと同じことを言っていましたよ」

「さっきからさっきから!私は・・・」

「違う、ですか?たとえばあの人たちより洗練されている、と?」

「そうは言いませんが、まあ、人並みかと」

「調査によると、あなたはロクに使えもしないスマホに月何千円も払い、高価なパソコンなどを粗末に扱ってすぐに壊してしまうとか。そのくせ食事代では数百円・数千円をケチり・・・」

「だから何が言いたいんだ!」

「少額には敏感、高額には鈍感、モノを大切にしない。子供の正常な思考の発達を阻害するリスクが懸念されます。また、料理を値段で見るようになってしまっているのも、「北海道のラーメン」といった分類法を身に付けてしまっているのも、良くありません。子供の食に対する姿勢が洗練されず、食文化を楽しむ下地が構築されない可能性が高い」

「いいかげんにしろよ」

「食べ方が汚いのも悪い」

「いいかげんにしろ!」

「食材を含め、その料理を結実させた全ての存在にまるで関心がない。まあ、モノを舐めていることには目を瞑っても、作り手を舐めていることは看過できませんね」

「舐めてません」

「というか他人を舐めている」

「なんでそうなるんだ!」

「調査によりますと、あなたは「レール」から外れた人間や自分より学歴の低い人間を「劣っている」として下にみる傾向があると」

「ありません」

「休職から復帰した部下が、仕事がきついと訴えても、その人の理屈を無視し、「気にしすぎ」で片づけたと」

「そんなこといちいち気にしてたら切りがないんだよ!大体、弱すぎるんだよ、心がさ。というか、この話、子供と何の関係があるの?」

「世間の基準と自分の判断との使い分けが自己中心的すぎますね。子供が何かを訴えても、「常識」を優先したり、笑って誤魔化したり、マジメに取り合わなかったり、言葉が足りない部分を勝手に解釈して決めつけたり、といったリスクが懸念されます。あなた、恨まれますよ?いや、あなただけじゃない。子供は人類を憎悪するようになります。こんな奴を生み出す人間という生物は、みんな死んでしまえと思うようになる」

「そのぐらいのことはね、我慢できるようにならなきゃ・・・」

「だから、それはあなたの勝手な判断でしょう。そうやって立場の弱い相手には平然と勝手な判断を適用し、「みんな」や権威者の判断にはおとなしく従う。強制労働制に従うようにね」

「どうしてこんなに責められなきゃいけないんですか?私、何か悪いことしましたか?こんなこと、みんなやってることじゃないですか?みんなで我慢し合い、許し合い、助け合うのが人間社会ってもんじゃないんですか?そういう弱さと強さを抱えた存在が、人間なのではありませんか?」

「「悪いこと」ってなんですか?」

「法律に違反したり、なにより世間様に顔向けできないようなこと、でしょう」

「自分たちを「人間」ではなく「労働者」にする仕組みから目を逸らすことは、「悪くない」ことなんですか?子供を穢れ奪われるだけの世界に放り込むことは、「悪くない」ことなんですか?他人を舐めることは、「悪くない」ことなんですか?弱い立場の相手に勝手な判断を適用することは、「悪くない」ことなんですか?」

「いや、私は世間様に・・・」

「世間様に顔向けできるようにさえしておけば、何をしてもいいのですか?」

「もういい!もうやめてくれ!どうして、どうしてそんなに追い込むんだ!」

「実はね、この面接は救済措置なのですよ。「親になる資格なし」という結果は既に出ていましてね」

「はあ?」

「あなたが「罪」と「業」を認めていてそれでも子供を望んでいるとわかったら・・・」

「ちょっと待てよ!だったら一体いつどこでどうやって審査したっていうんだ!」

「最初の質問です」

「え?」

「当審査会では、「あなたは子供をお望みでしょうか?」という質問に「いいえ」とお答えになった方、つまり「今の社会に子供を放り込んではいけない」と判断できる方に、親の資格を与える決まりになっているのです」

「なんだよそれ、訳わかんないよ・・・・・・そんな判断・・・・・・なんなんだよ・・・・・・そんな人間どこに・・・・・・これから私はどうす・・・」

「罪を贖え」


人は夢に縋り、サーカスは明日も回る

「単刀直入にお伺いしますが、どうして叶わぬ夢をいつまでも追い続けたのでしょうか?」

「どうして・・・・・・ねぇ」

「後悔は?」

「してますね」

「ははぁ、やはり後悔するものなのですね」

「まあ、あなたが思っているような「後悔」とは違うでしょうがね」

「じゃあ一体どういう「後悔」なのですか?」

「オレはね、もっと好きなことをやればよかった、って後悔しているんですよ」

「え?それだけ自分勝手に夢を追い続けたのに?」

「「自分勝手」・・・・・・か、ははは、あなた、面白いこと言うね」

「なにがどう面白いの?」

「逆に聞くけど、あなたは自分を「自分勝手」じゃない、と思っている?」

「まじめに働くってことは、成長して「自分勝手」から卒業するってことだからねぇ」

「全てにおいてあなたより有能な人間が見つかったからクビ、って言われたらどうします?」

「怒るよ。こっちだって生活がかかっているんだから。それまで尽くしてきたのに、簡単にポイポイ首を切られたらたまらんでしょ」

「「自分勝手」じゃない人間なら、そこで会社の繁栄を優先しませんかね」

「それは屁理屈だよ」

「「自分勝手」というレッテルを回避できる人間になることを、「成長」と言うわけですな」

「まっ、まじめに社会人をやった経験が乏しい人には、「成長」と言ってもわからんのだろうね」

「社会人経験が乏しいオレにとって、「成長」ってのはカネですね。明日も雇ってもらえるならそれは「成長」だし、雇ってもらえないなら「成長」でもなんでもない。カネになるなら「成長」で、カネにならないなら「成長」じゃない」

「そういう考え方だから、夢を諦めても安定した仕事がみつからないんだよ」

「「成長」ってのは贅沢品ですよ。安全地帯にいる人間が、ぬくぬくと「死」について考えるのと同じでね。「成長」ってのは、追い詰められてない人間だけのもんでしょう」

「そんなんじゃいつまで経っても充実しないよ」

「「充実」も、あとは「社会貢献」なんてのも、贅沢品だなぁ。オレには、そんな余裕なんてないや。ははは、やってることが社会貢献になってるかどうか、なんてことも、「自分勝手」じゃない優秀な方々に是非とも考えていただきたいものですがねぇ」

「贅沢品どころか、こういうものを当たり前に感じることのできない方がおかしいと思うんだがね」

「当たり前?「成長」なんてないのに?」

「どういうこと?」

「サーカスの動物が芸を覚えることを、「成長」と言いますか?」

「ふざけるな!あまりにも失礼じゃないか!」

「ふざけているのはオレじゃなくて、仕組みの方でしょ」

「サーカスだのなんだの妄想じみたことを言って他人をバカにしてないで、素直に現実をみたらどうなんだ!」

「現実、ねぇ」

「そうだ、現実だよ!お前らのような人間は現実から逃げ続けたから、そうなったんだろうが。現実ってのはな、いつか必ず直視しなきゃいけなくなるんだよ。だからいち早く直視し、頑張った者は、充実した良い生活を送ることができるようになる。一方、現実から目を背け、ダラダラと夢を追い続けた者は、こうして落ちぶれるってわけだ」

「現実なんて、少なくともオレの知り合いはみんなよくみてましたよ。まじめに「社会」に参加したところで、労働者カーストの下層に押し込まれ、安い給料でバカにされながらへーこら生きていくしかない。労働に時間を全部奪われちまうから、何かやる余裕もなくて、今日を酒で流すために必死で飲むしかない。今のオレみたいにね。ははは、夢の次は酒に縋るクズですか?けどね、こうでもしないと、「明日が来る」ってことの重みに耐えられないんですわ」

「はっ。現実をみていないから、いつまでも「売れたい」なんて言ってへらへらしていられたんじゃないか?」

「他の人はどうか知りませんけど、オレの「売れたい」は嘘でしたよ。夢に縋り続けるための嘘。それで「こいつはどうしようもないバカ」と周囲に見放してもらうと。「売れるかどうか」は中々わからんでしょうが、「売れない」ってことは自分でもすぐわかるからね。人々の好みに合わせることができるか、元からそういう方向が好きなら、可能性があるけど、大抵の人はそうじゃない。可能性ゼロ、絶対に売れない、他の人もどこかでわかってるでしょう。それで、自分が「社会」に出たらどうなるかってことも、きっとわかってる」

「やっぱりバカなの?他人の好みに合わせられないんじゃ、売れないに決まってるじゃん」

「それができる器用な人間なら、「社会」でもうまくやっていけるんだろうね。オレみたいな奴は、器用じゃないから、へらへら笑うことしかできない。そうそう、後悔するのはね、そこなんですよ。一瞬でも「売れたい」と思ってしまったことを後悔するんだなぁ。器用じゃないのに、中途半端に合わせようとして、ね。好きにやれば良かったって、その時間を後悔するんだなぁ」

「売れないとわかっているのに、夢に縋り続けられるものなの?」

「逆、逆。自分が「売れない」側の人間だとわかっているからこそ、夢に縋り続けられるんですよ。夢に縋るのはオレみたいな奴だけ。だって、明日は今日よりよくなるかもって、漠然とでも思いたいじゃない?だったら、夢しかない。だから「夢」って言うんだろうな。世間が夢を叶えたって称賛するような人にとって、それは「夢」じゃなくて「現実的な目標」でしかないからね」

「訳がわからないなぁ。カーストの下層に押し込まれるとわかっていたら、普通は将来のことを考えて、少しでも良い待遇を求めて努力するだろう」

「「少しでも良い」なんて無いも同然だってこと、可能性や展望のある人にはわからないでしょう。長期的な損得計算も、キャリアなんてのも、贅沢品なんですよ。将来を考えろって、オレにどんな「将来」があったんですかね?人並み外れた歌声とか身体能力とかがあるはずもなく、学歴さえ満足に得られない、ダメ押しで器用さも持ち合わせていない・・・・・・そういう人間に、一体どんな「将来」があると思います?」

「いや、しかし、やはり現実を受け入れ、等身大の自分を受け入れれば、少しでも良くできるよう努力すると思うのだが」

「世間の印象とはまるで逆なんですよ。自分を過大評価しているのでも、自分を特別視しているのでもない。現実も、等身大の自分も、とっくに受け入れている。受け入れてないのは、この・・・・・・いや、やめておきます」

「この、なんだよ!」

「サーカスに順応した人間はサーカスがみえなくなる。サーカスが夢を食って回っていても、ね。どうして叶わぬ夢をいつまでも追い続けたのか、こういう問いを立てる時点で、あなたにはわかりませんよ」

「だから失礼なことを言うな!」

「滑稽だなぁ、うん、本当に滑稽だ。人は夢に縋り、サーカスは明日も回る。ははは、人は夢に縋り、サーカスは明日も回る」


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Author:遊民
読みたい本が山積みなのでニートしてます。

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