自己紹介ではない自己紹介

                警告ではない警告

当ブログ、twitterには「賃金奴隷」「労奴」「カネの奴隷」「強制労働」「労働教」といった言葉が登場します。こうした言葉に怒りを抱く方や、「働くのは当たり前」といった思想・信条をお持ちの方は、すぐにブラウザを閉じ当ブログの存在を忘れるのも良いですが、せっかくなのでちょっと見てみるのも良いかもしれません。一方、こうした言葉に興味のある方や、拒絶反応を起こさない方は、ぜひ当ブログを見ていってください。共感なり、気づきなり、明日を生きる励みなり、何かしら得ていただけるよう、私は精進していく所存であります。



毎日、きつい。毎日、苦しい。悲しい世界。

労働者は、毎日失業の恐怖に怯えている。失業者は、生活の糧を失い途方に暮れている。子供も、若者も、大人も、いつ切れるともしれない、薄っぺらで、儚く、しかしそのくせある種の強制力を持った「つながり」の中で、孤独を抱いている。生活を人質に取られても、誰にも頼れず、独りぼっちで、賃金を得に、労働市場へ赴く。恐怖と孤独に苛まれながらも、「生活保護」をエサに、「敵」との競争を強いられている。

それなのに、人々は「保護の充実度」に意識を集中させ、優劣を持ち込み(「あいつ、非正規なんだってよ!」)、意味を見出し(「それだけ社会に貢献しているんだ!」)、いただいた「(賃金奴隷としての)身分」に執着・愛着を抱き、ときには「生活を守る」などと使命感さえ持って奴隷状態を正当化する。

「みんなが頑張って働いているから、今の豊かな生活があるんだ」

こうした考えは、その人間が精神的にも賃金奴隷となってしまった証でしかない。モノは余っているのに、賃金分配。技術は日々進歩しているのに、賃金分配。「賃金分配」というドグマへの執着。それによって生じる「人力」信仰。「行き過ぎた進歩」・「過剰な便利さ」、進歩や利便性よりも、賃金分配。人々の積み重ねを台無しにしても、賃金分配。現役/将来世代を犠牲にしても、賃金分配。「みんなが頑張って働いている」だけだから、賃金分配。

人間は生活を人質に取られないと、何もしないのだろうか。カネの奴隷にならないと、他人のために何かしようと思わないのだろうか。強制されないと、頑張ることもできないのだろうか。人間観までもが奴隷のそれと化してしまい、あまつさえ自明性さえ獲得し、制度・教育・日常生活を通して無意識のうちに再生産されていく。

「どこにお勤めでしょうか?」

枷を見せ合い、互いに「身分」を確認し合う儀式。

「賃金を上げろ!残業を規制しろ!」

末永く奴隷をやらせていただきたいのでもっと優しくしてください、情けない服従宣言。

「保育園落ちた日本死ね!」

労奴を続けたいから子供を預かれ、倒錯した怒り。

自分で自分の首を絞めているのに、気づかない。苦しみたいから苦しむけど、苦しいから苦しいのはもう嫌だ。原因帰属の錯誤によりドツボ。

いただいた「身分」を誇示し、悦に入る。お仕着せの娯楽と流行で、カラカラ笑う。無意味で無価値で滑稽で、無力で虚ろで閉塞するだけの日々。強いられる空虚な生、強いられる空白の時間。人生を換金するだけの日々、換金のための「自己投資」をするだけの日々、換金のため休養するだけの日々。今日も至る所で、前向きな歌詞の流行歌が流れ、前向きな言葉が持て囃され・・・・・・。

耐え難い空虚さ(そんなことより恋愛しようよ!)

圧倒的な無力感(一生懸命やってれば元気が湧いてくるさ!)

底無しの滑稽さ(ごちゃごちゃ考えてないで、目の前のことを全力でやろう!)

どす黒い閉塞感(希望を持って、働こう!)

ここは地獄だ!(ここは天国だよ!)

学びも、活動も、全てが「賃労働」に通ず。能力も、人格も、全てが「賃労働」に通ず。労働市場に強制参加、そして賃金に釣られて、くるくる回る。くるくるくるくる、たのしいな、たのしいね。

どうしようもない。

毎日、きつい。毎日、苦しい。悲しい世界。

                要約ではない要約

私はニートをやっています。悲しい世界について、「考察」したり、「おはなし」を書いたりしています。週一で更新します。よろしくおねがいします。

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散歩中の観念連鎖

外に出た瞬間 確信した
人はみんな嘘つきである
みんな 空は青い と 言っているから
嘘つきだらけ 嘘っぱちばかり
空は 赤 黄 橙 紫
空は 極彩色の縞々
世界統一を賭けてせめぎ合い
うねうね揺れる 極彩色の縞々

雲は垂れ下がるにつれ曖昧さを増し
空は混沌を介し 地上へ流れ込む
うねうね どろどろ
ちぎれたり 溶けたり
絡み合ったり 食い合ったり
和解の兆しはまるでみえない

途方に暮れるあまり
歩きながら眉間に意識を集中させる
目の前が蕩け 形も境界も失い ぐにゃぐにゃ動く
目に映る現実など儚いものである

地面の感触がなくなり 昇っているのか 沈んでいるのか
それとも何の変哲もない舗装された道をただ歩いているだけなのか
あるいはそもそも移動してさえいないのか
なんにせよ ぶよぶよの世界
深海を歩いているようだと感じれば
目の前に透明な魚がやってくる
こいつを通して世界を眺める
ぶるんぶるん 波打ち震え
赤になった
どうやら今日は赤の勝ちらしい

赤くなった世界で
小さな黒い影が 操り人形のように
カタカタと跳ね回る
大きな黒い影が 操り手のように
スルスルと付け回る
欲を這わせ蛻を飾り
身を焼かれ優越と笑う
それでも生まれ変われば許されると思ったか?

集中がプッと途切れ さささささ~ お定まりの世界
この抜け目のなさこそが
まやかしのまやかしたる所以であり
まやかしのまやかしたる証なのである

頭の中で 渦が巻き始める
そこかしこで
ぐるぐる ぐるぐる
消化不良の観念が脳を回している
ぐるぐる ぐるぐる
オレたちに居場所を与えないつもりか と 怒っている
絶望的なメモリー不足
自分という個体の どうにもならない質の低さ

書物を読めば たちどころに理解し
構造化された概念としてしかるべき場所に位置づけられる
一を聞けば 百を知り
百を知れば 万を理解する
そんな個体に 私は生まれたかった

救いを求めて歩き回り
苦痛に追われて言葉に縋る
ころころ ころころ 転がる言葉
手元に残るのは 言葉の残滓
一瞬でも言語化された思考は全て記憶・保存される
そんな個体に 私は生まれたかった

頭の中には ぐるぐるが残り
結局、何も変わらない
束の間の救い 見せかけの救い
一を聞けば 救われる
そんな個体に 私は生まれたかった
零のままでも 救われる
そんな個体に 私は生まれたかった

けれど、私はそんな個体ではないので
そんな個体ではない、この個体のままで
しかたなく
救いを求めて歩き回る
はぁ 不条理だ
私は私である
私は私でしかない
私は私であり続けねばならない
途方もない不条理だ
そんな個体ではない、この個体のままで
しかたなく

明日は 散歩に いけるといいな


他人の背景はわからないということ

いじめによる自殺といった話を耳にすると、結構な数の人が無意識のうちに犠牲者を責めてしまう。本人が弱かったから、いじめに耐えられなかった。コミュニケーション能力が低かったから、いじめられた。犠牲者に原因を帰属させ、責めるのである。「どうして相談しなかったのか/逃げなかったのか」「大袈裟に考え過ぎだ」などと言う人もいるが、これらもまた「できなかったこと」や「考え方」に焦点を当て、犠牲者を責めている点では変わらない。

いじめはいじめられる方も悪い。そう、「悪い」のである。悪いから責める。逆に、いじめる方は、悪くないから責められない。「いじめはいじめられる方も悪い」に代表される「責め」の言説は、いじめる方を免責し、いじめられる方に「悪い」を移行させるものである。

いじめ、不登校、自殺・・・・・・。こうした話を聞くとき、私はある種の「気持ち悪さ」に気づくことがある。「どうせ本人のせいにされて終わるんだろうな」という諦めが圧倒的ではあるが、片隅には確かに幾ばくかの「気持ち悪さ」がある。しかし、自分とは全く関係のない人間の話を聞いて、なぜ「気持ち悪さ」が生じるのか。

「本人が悪いから悪いことが起こる」、私たちは悪い知らせを聞くとこう考えてしまう。因果応報、信賞必罰。このように考えるのは人間の本性かもしれないが、私は人間関係ゲーム(上か下か)と「競争」の浸透がこの本性を過剰に引き出していると思う。人間関係ゲームに支配されたコミュニティでは、成員は地位を守るため「減点」を回避しようとし、何かあれば(自分より弱い)他人に責任を押し付ける。「競争」で利益を得る人間は、「努力できなかった奴が悪い」と有無を言わさぬ形での正当化に飛びつく。また、こうしたことをされた方は「次こそは・・・・・・」と執念を燃やし、地位や利益を手に入れれば強く執着するだろう。そのためゲームと「競争」が支配する世界に没入し続けると、「責任は犠牲者の方にある(ことにする)/負けた方が悪い(ことにする)」といった「常識」を身に付けることになる。

つまり、「気持ち悪さ」の正体は矛盾なのである。報道では(一応)いじめる方の責任を問うので、日常生活で身に付けた「常識」と矛盾する。「当たり前」から逸脱している不快感。それで無自覚・無意識のうちに、自動的に、「犠牲者が悪い」ことにする。犠牲者に原因を帰属させ、責める。知らない相手を勝手に判断して、責める。犠牲者が悪いから責める。責めることで犠牲者が悪いことにする。自分の「常識」に合わせるためなら、見ず知らずの他人を「弱い」の一言で切って捨てることも躊躇わない。

私たちは「常識」を深く内面化しているため、「他人の背景はわからない」という当たり前のことを都合よく無視してしまう。他人がどうやってある決定・状態に至ったのか、わかったことにすることはできても、わかることはできない。たとえばヘマがきっかけでいじめられるようになって最後は自殺した人がいたとして、その人がたまたまある行動を取ったことで周囲の反応がちょっと変わり、神経伝達物質の出方もちょっと変わって、それが別の行動に結び付き、うまくいっていた流れが一転してヘマに結び付いたのかもしれない。これは極端な作り話だが、ちょっとした偶然は結果を大きく左右するし、その結果がさらに現実に作用し、未来を大きく左右する。

偶然だけでなく、遺伝・環境・状況に依るところも大きいし、個体差があるから何をどう感じていたかもわからない。こちらからでは他人の背景の断片しかわからない。その断片を言葉にされたらもっとわからない。しかし言葉にされることで、わかったことにすることは容易になる。たとえば「いじめを苦に自殺した」と聞けば、なぜか「わかった」と思ってしまう。残念なことに、それで自分がわかったことにしていることがわからない。自分の都合で判断してしまっていることもわからない。それどころか、本気でわかったと思い込み、本気で正当な判断だと思い込む。自分の背景(のごく一部)さえわからないのだから、他人の背景もわかるはずがない。

遺伝子、置かれた環境・状況、訪れた偶然、こうしたことの積み重なり=人生を蔑ろにし、無数の「わからない」を無視し、「弱いから死んだ」といった判断を具体的な個人に適用する。それも、自分の都合で。これはかなり残酷なことだと思うが、人間関係ゲームと「競争」に没入し続けてきたためか、多くの人が慣れてしまっている。「他人の背景はわからない」「これは勝手な判断にすぎない」「自分の都合で犠牲者を悪者にしようとしている」、いじめ自殺ばかりでなく、何かを知って/聞いて件の「気持ち悪さ」を感じたときは、こうしたことを思い出し、陥穽にはまらないようにしたい。


天国に至る門

ある国の若者が、神に尋ねました。

「神よ、なぜ私はつらい競争に身を投じねばならないのでしょうか?」

すると、どこからともなくたくさんの紙が集まってきて、人型の像を形作りました。

人の形になった紙
「我は神なり。汝、我が欲しくはないのか?」

若者は欲得で充血した目をカッと見開き、地面に何度も頭を打ち付けながら、答えました。

「欲しい!あなたが、欲しい!」

満足げに頷く神(ただし紙でできている)
「ならば、争え!そして、手に入れよ、内定を!」

若者は戦慄しました。なぜなら、若者は神の力を借りねば生きていけないからです。神の力がなければ、何一つ手に入れることができません。若者には神の力がどうしても必要なのです。

若者は己の無力を痛感しました。

「神様がいないと、何もできない」

若者は己の孤独を痛感しました。

「大いなる歴史の流れも、人が拠って立つ大地も、絆に基づく共同体も、神様の力の前では、全て無力だ」

若者は理解しました。

「神様以外に、拠り所たりうるものはない」

すると、どこからともなくさらにたくさんの紙が集まってきて、若者の周りを舞い始めました。

神(カサカサ音を立てている)
「汝に問う。会社とは何か?」

若者は答えました。

「神の使いであります」

ひゅ~。 ひゅ~。

風が吹き始めました。

神(ヒラヒラ舞っている)
「汝に問う。労働とは何か?」

若者は一寸考えて答えました。

「神の力を分けていただくための儀式であります」

ひゅるるるる! ひゅるるるる!

風は強さを増し、嵐の様相を呈し始めました。神の怒りに触れてしまったのです!焦る若者は必死に考えを巡らせ、答えました。

「修行であります!神の使いに師事し、修行することであります!」

神(怒りがおさまらぬようだ)
「汝に問う。内定とは何か?」

若者は怯えながら答えました。

「神の使いに仕える者という身分の約束であります」

びゅるるるる!! びゅるるるる!!

紙が押し寄せ、若者を飲み込むと、天高く伸びる巨大な竜巻となって、若者に襲い掛かりました。

激怒!!

若者は飛ばされぬよう地面にへばりつき、一心不乱に許しを請いました。

神(激怒している!)
「会社の温情なかりせば、貴様はどうなる!!」

雷が若者を直撃!

「死 ん で し ま い ま す ! ! !」

風がやみ、無数の紙がバサバサッと宙を覆い尽くしました。若者がその無秩序な舞を畏まってみていると、紙はいつの間にか厳かにそびえる門を形作っているのでした。

神(なんと寛大であるか!)
「物わかりの悪い人間は、直にみる以外あるまい!」

門が開くと、そこにはたくさんの人々がうごめいていました。手枷足枷をはめており、異様な動きをしていました。何人かは金の枷をはめ、大半の人は・・・・・・なんと、紙でできた枷をはめています。紙の枷をはめた人たちは、枷を破らぬよう、慎重に手足を動かしていました。これが異様な動きの正体でした。

遥か遠方には、山と見紛うほど大きい装置がありました。装置はゴウン、ゴウンと音を響かせ、次から次へとモノを産み出しています(装置の付近では何かが行われているようですが、ここからでは見ることができません)。

ほいほいほいほい!
ずんどこずんどこ!
ぱおぱおぱおぱお!
どんどこどこどん!

装置に圧倒されていた若者は、突然の奇声に驚いてしまいました。一体なにごとでしょうか。金の枷をはめた人が取る珍妙な音頭に従い、紙の枷をはめた人々が踊り始めたのです。とても、窮屈そうに。それでも、精一杯、体をぷるぷると震動させています。

神(慈愛に溢れている!)
「これが現実で真実だ!」

ずどーん!!

踊りに呼応し?、装置がぶるぶる震えたかと思うと、轟音とともに、神の力が宿った紙が天上に放出され、群衆の上に降ってきました。踊る。生まれる。降ってくる。踊ることで、世界に神の救いがもたらされる。因果関係の成立。

紙が落ちてくると、金の枷をはめた者たちはぴょんぴょん飛び跳ねながら、紙の枷をはめた者たちは枷を破らぬよう慎重にぴょこぴょこ飛び跳ねながら、無我夢中で紙をかき集めはじめました。しかし、僧衣を纏った者が呪文らしきものを唱えながらやってきて、ハアッ!と気を発すると・・・・・・なんということでしょう!紙がスルスル~と人々の手をすり抜け、その者のもとに集まっていくではありませんか!人々は呆然としていましたが、すぐに我に返り、念力が及ばなかった紙を巡って争いを再開しました。

金の枷をはめた人たちが安心して動くことができる一方で、紙の枷をはめた人たちは激しく動くことができません。ですから金の枷をはめた人に襲われてしまうと、紙の枷をはめた人はひとたまりもありません。手に入れた紙を腹の下に隠し、体を丸めて耐えてはみるものの、最後は金の枷をはめた人に紙を全部奪われてしまうのでした。その隙に、運よく襲撃を免れた人たちは、ぴょこぴょこと逃げていきます。尊い犠牲です。しかし、どうしたことか、安全地帯に到達すると、紙の枷をはめた人たちはクルッと向き直り、犠牲者を嘲笑し、略奪者を称賛したのです。「勝者」たちは、黄金の枷を誇示し、声に応えました。

金の枷を舐め回しているお兄さん(誇らしげである)
「ここは天国だ!」

金の枷に頬ずりしているお姉さん(誇らしげである)
「ここは天国だ!」

逃げおおせた人々(枷を破らぬよう慎重に両の拳を突き上げている)
「うおー!!!天国!天国!天国!天国!」

紙がなくなると、みんなそれぞれの場所に戻っていきました。紙を手に入れることができなかった人たちは、装置から出てくるモノを恨めしげに凝視していましたが、一人、また一人、びょこ、びょこと、重そうに跳ねていきました。しかし、最後の一人は、虚ろな表情でモノを眺めていたかと思うと、突如錯乱し、ゲギャギャギャギャ!と絶叫して喉をかきむしりはじめました。すると、その激しい動きのせいで、紙の枷が、ピリッと破れてしまいました。しまった!と思ったときにはもう遅く、足元が割れ、その人は地の底へ吸い込まれてしまいました。紙の枷をはめた人たちは、自分の枷をジッと見つめ、「ありがたや・・・ありがたや・・・」と呟いていました。

「ははー!!これが、神様のしかけ!!」

若者は悟りました。つまり、「社会人」になる資質を開花させたのです。


「今一度汝に問う。会社とは何か?労働とは何か?内定とは何か?」

若者に迷いはありませんでした。

「会社とは、天国であります!労働とは、世界救済であります!内定とは、通行証であります!天国に至る門の、通行証であります!」

若者は紙を握りしめると、リクルートスーツを求めて走りだしました。


脱落者の館

館長「お~い、みんな集まって~。新しい人を紹介するよ~」

「ここはどこだ!こんな所に来た覚えはないぞ!出せ、出口を教えろ!」

館長「ここに出口はないよ。あなたは、わしらと一緒にここで暮らすんだ」

「ふざけるな!ここは一体何なんだ!」

館長「ここは脱落者の館。言葉の通り、今の社会から脱落した人が辿り着く場所だよ」

「オレはまだ負けてねえ!」

「ははは、まあまあ、とりあえず名前を教えてくださいよ」

「なんだぁ、お前は?」

「元気のいい人だなぁ。じゃ、まあ、とりあえず「新入り」さんと呼びますか。私のことは「景気」と呼んでください」

新入り「景気?」

「はは、それは面白い思い付きですね。じゃあぼくは「受験」で」

「わいは「遺伝子」ですわ」

「あたしは「家庭」だね」

「オレは「フリーター」かな」

新入り「ちょっと待て。「フリーター」はともかく、景気に受験に遺伝子に家庭ってのはなんだ?」

遺伝子「「この館に来たきっかけ」やで。まっ、あえて還元すればっちゅうことやけど。わいの場合は遺伝子やったから、生まれた瞬間にここに来たんやろうね。まっ、そんときのことは全然覚えて・・・」

新入り「いや、待て。それじゃ逆に「フリーター」ってのはなんだ?」

フリーター「さあ?なんか大学出て適当にブラブラしてたら、いつの間にかここにいた感じなんで」

新入り「人生を舐めるな!!まったく、こんなバカと一緒に暮らせるか!いいか、オレはお前らとは違う。X大を出て、あのY社に就職。毎日必死で働き、順調に出世街道を走ってきた。お前らみたいな脱落者とは永遠に関わるはずのない人間なんだよ」

館長「しかし人工知能の台頭でリストラの対象となり、その性格が災いして再就職に失敗、生活に困窮し、かつての顧客を相手に投資詐欺を働いたと」

新入り「仕方がなかったんだ!」

フリーター「あ~、X大ってなんか聞き覚えがあると思ったら、オレもそこ出たんだわ」

景気「へぇ~、そうだったのかぁ~、君はエリート候補生だったんだなぁ~」

フリーター「まあ、適当っす、適当」

新入り「嘘を吐くな!お前のような堕落した人間が入れる大学じゃないぞ!・・・そうか、お前が言ってるのはX経済大学だろう?な?あそこは偏差値40ぐらいだから、どんなバカでも名前を書けば入れる」

フリーター「お互い脱落しちゃったんだから、偏差値序列なんてもうどうでもいいじゃないっすか」

家庭「つーかオジサン、犯罪者なのに堕落とか言っちゃって大丈夫?」

新入り「オレの場合はなぁ、仕方がなかったんだよ!それよりなんだ、「家庭」ってのは?ええ?家庭環境が悪いからといって、全部そのせいにして甘えていいわけじゃないだろう?そこから這い上がる努力をしたのか?やろうと思えばいくらでも勉強はできる。学歴は手に入る。そうすれば、そこそこの就職口は見つかるはずだ」

家庭「観念だけでモノ言ってんじゃねーよ、タコ」

受験「まあまあ、新入りさんは来たばかりで、きっと混乱しているんだよ」

新入り「お前は「受験」だったな?はぁ~、情けない!受験勉強もまともにできなかったのか?」

景気「新入りさん、そう攻撃的にならないでくださいよ。みんなそれぞれのっぴきならぬ事情を抱えてここに辿り着いたのですから」

新入り「あんたは景気の悪化でクビになったとか?」

景気「クビというか、所謂派遣切りってやつですな」

新入り「恥ずかしくないのか!あんたは、自分の頭で社会の未来について考え、適応する努力を怠ったんだろうが!」

景気「あぁ、懐かしい。会社が雇ったキャリアカウンセラーなる人にも同じようなことを言われましたよ。ネチネチ、ネチネチ、備えを怠ったとか、適応能力がないとか、切られて当然だとか。こうやって意志を挫いて、逆らう気力をなくそうってことだったんです」

フリーター「ひどい話っす。後知恵の正論を振りかざす奴は虫が好かないっす」

遺伝子「運良く生き残ってるだけの人間が、上から説教垂れよってからに」

家庭「つーかオジサン、自分のアタマで考えた結果、じんこーちのーってのに追い出されたんでしょ?超間抜けじゃん。他人に言ったこと、できてねーし」

新入り「何も知らない人間が偉そうな口叩くな!」

家庭「だっさ。「なにもしらないにんげんがえらそうなくちたたくな」、まんまお返しするわ」

新入り「クソガキがっ!!人工知能はお前みたいな低能の手に負える相手じゃねーんだ!!」

家庭「手に負えないでここに来た人、誰だっけ?」

受験「まあまあ、新入りさんは来たばかりで、きっと戸惑っているんだよ」

新入り「やかましい!あんなのはなぁ、誰にも予測なんてできなかったんだ!」

受験「けどおかしいなぁ。ぼくが向こうにいた頃から、人工知能ってけっこう話題になってましたよ」

新入り「人工知能が人間を超えるなんて話、信じられるかよ!」

家庭「ぷぷぷ」

新入り「おい、殺すぞ?」

家庭「犯罪者こえ~」

新入り「クソ!クソ!!クソ!!!今まで会社に尽くしてきたのに・・・やるべきことをやってきたのに・・・クソ!クソ!こんな国家の寄生虫まがいの連中と一緒の空間に・・・地位に・・・ガキにもバカにされ・・・クソ!クッソォォォォ!!!」

フリーター「まっ、今までは会社にうまく寄生できてただけってことで、これからは寄生虫同士仲良くやりましょうよ」

新入り「聞き捨てならんなぁ、おい、X「経済」大学出身のプー太郎さんよぉ」

景気「そうだよ、「寄生虫」はよくない。私らはただ保護をエサに競争させられてきただけなんだから。同じ被害者同士、仲良くしましょうよ」

新入り「被害者ぁ?誰が?」

景気「私らみんなさ」

新入り「怠け者が被害者ぶるな!!お前らはただ努力を怠っただけなんだよ!」

遺伝子「え?わいも?」

新入り「当たり前だ。お前に少しでもやる気があったら、きっと生まれた瞬間にここに来ることはなかっただろう。結局、全てにおいて弱かったんだ。完全に自己責任じゃないか!」

遺伝子「ひどいなぁ。そんじゃ、両親がどうしようもない奴で、幼い頃から家事と弟の世話に追われていた人は?」

新入り「自己責任だ」

家庭「いじめの記憶やいじめた奴らと離れなければって重圧に苦しんで、受験に失敗した人は?」

新入り「自己責任だ」

受験「病気で正社員になれなくなった人は?」

新入り「自己責任だ」

フリーター「過労で健康を壊したときに景気悪化に見舞われた人は?」

新入り「自己責任だ」

景気「人工知能のせいでリストラされ、生活に困窮し、詐欺に手を染めた人は?」

新入り「自己責任だ」

館長「自己責任でよろしいのですか?」

新入り「当たり前だよ。未来を予測して準備できない無能だったんだから。それで詐欺に手を染めるなんて、どうしようもない」

館長「あなたは?」

新入り「オレの場合は仕方がなかったんだよ。オレを追い出した人工知能の進歩は一般的な予測の範囲を遥かに超えていたし、詐欺といっても客との信頼関係に基づくものだったから、まあ、実質的には詐欺じゃないっていうか」

家庭「オジサン、やばくね?」

フリーター「新入りさん、今の制度は、少数の人が保護されて人並みかそれ以上の生活を送る一方で、多くの人が人並み以下の生活に押し込まれる、そんな仕組みになってるんすよ。組織は補助金や優遇措置といった保護を求め、庶民は組織に保護を求める。保護枠を巡る競争っす。しかも多くの人が枠からあぶれるんす。それじゃあ、なんでオレらはこんなバカバカしい競争をさせられてんだって話っす」

新入り「だから、脱落したのを制度や仕組みのせいにするな!」

家庭「この人と暮らすとか、ムリじゃね?」

景気「まあまあ、少しずつここでの生活に慣れていきま・・・」

新入り「おい、負け犬の分際でオレを子供扱いするな!」

館長「とりあえず遺伝子くん、部屋や施設を案内してあげて」

遺伝子「うい」

新入り「オレに触るな!負け遺伝子がうつる!」

受験「まあまあ、そう攻撃的にならないで」

新入り「落ちこぼれがオレに説教する気か!?」

景気「ここにはそんなことする人いませんから、安心してください」

新入り「オレを子供扱いするな!」

遺伝子「誰もそんなことせんから、ついてきてや。ここでこうしてたら話が進まないんですわ」

新入り「クソ!いいか、お前らよく覚えておけ!オレはまだ負けてない!お前らとは違うんだからな!」


プロフィール

Author:遊民
読みたい本が山積みなのでニートしてます。

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