所有欲に苛まれる中学生たちの憂鬱

「おい!返せよそれ俺んのだぞ!」
「ちょっとお!先にとったの私でしょ!」
「いえ~い!ここ俺たちの領土ー!」
「へっへっへ、お前は俺のものだよ」
「クソが~、なんであいつに才能が・・・」
「この子は私の子よ!」
「だめだ!俺たちはこっちのおもちゃで遊ぶんだぞ!」
「働いて社会に貢献しない奴は死ぬべきなのだ~!」

・・・・・・

「今日もヒトがヒトをやっているんだろうなあ」

「はあ、あんた何言ってんの・・・って、なんで人のパン勝手に食べてるのよ」

「おや、ここにもヒトをやっているヒトがいる」

「どういうこと?」

「所有欲を発揮しているってことさ」

「それ買ったの、私なんだけど」

「市場は批判されることも多いけど、この欲を満たすための制度としてはわりと平和的だ。お金を払いさえすれば、綺麗に所有権が移るのだから」

「よくわかってるじゃない、あんた所有権を否定する気?」

「そんなばかな。今の時代にそんなことしても、所有欲の歯止めがきかなくなるだけさ」

「そうなったらどうなるの?」

「うーん、わからないけど、兄弟喧嘩が参考になるんじゃないかな」

「兄弟は両親の愛情を巡って争うという説があった気がする」

「うん、それは否定されつつあるみたいだけど」

「じゃあなんで争うの?」

「資源配分だよ。人が増えたときにその分だけ資源が増えないと、先人の取り分は必ず減るだろ。食事、おやつ、おもちゃ、遊びの主導権。実体のあるものにせよ、観念的なものにせよ、「より多くを所有していたい」という欲がこの頃にはもう現れている」

「所有欲は人間に組み込まれている」

「と言っていいかどうかはわからないけど、逃れられないのは間違いないのだろうね」

「所有欲は嫉妬や暴力を生み、「才能」のような観念的な領域にも拡張していく」

「「働かない奴は死ね!」って言ってるヒトらも、所有欲である程度は説明できそうだね。自分を王と思い込み、人間を所有していると信じているわけだ。所有物が思い通りに王国を繁栄させてなかったら、せっかくの妄想が台無しだもん」

「本人は否定するだろうけどね」

「妄想に支配されているヒトは、そのことに気づかない」

「気づかないんじゃなくて、気づきたくないんだよ。妄想は気持ち良いから」

「妄想によるまやかしの救済」

「妄想といえば、「聖なる土地」「ご先祖様の土地」みたいな土地信仰も、所有欲の産物だろうね」

「所有欲とそこから生じる争いを正当化するために、聖性を付与したりご先祖様を作ったりして、その妄想を仲間と共有し合って士気を高めると同時に、争いへの参加を強制する。こうして互いの所有欲に奉仕し合うのだけど、ヒトは「自分だけは特別」と信じているから、「自分だけが他人を奉仕させている」と錯覚できる」

「争いに参加しない奴には容赦なく制裁を加えるわけだ。ランクが下の奴がちゃんと奉仕してなかったらむかつくもんね。おや、「働かない奴は死ね!」もこっちの説明のが良いんじゃないかな」

「そんで奉仕させ過ぎて死んじゃったら、軍神とか英霊とかに昇格させんだ」

「結果的に善なる存在になったことにする」

「善なる結果を生んだという都合の良い妄想」

「善なる結果は善なる意志のみから生まれるという妄想」

「自分たちの善なる意志に基づく行為の積み重ねが善なる結果を生んだ、と。つまり自分たちは善であり、正しいことをしたのだってね」

「他人の命より所有欲のが大事」

「所有欲をごまかすために用意される数々の妄想」

「塗れ塗れ塗れ塗れ!妄想に妄想を重ねて所有欲を塗り潰すのだ~!」

「ぴこん!妄想は「常識」に進化しました」

「ヒトって救われないね」

「ヒトに約束されてるのは永遠の繁栄じゃなくて延々と続く部族ごっこですよ」

「欲と妄念と妄想にまみれたどす黒いごっこ遊びね」

一同「はっはっは」

「多くの活動が兄弟喧嘩の延長にあるってのは、なんか残念だね」

「仲間との学びも、うまく他人を使って所有欲を満たすスキルを会得するためのものだしね」

「行き着く所は「あなた(方)のため」だけど」

「で、これが通用しなくなったら暴力と」

「せっかくスキルを会得しても、一皮むけば兄弟喧嘩かー」

「けど喧嘩はそうしょっちゅうあるわけじゃないし、大国同士の戦争は起こってないよ」

「いじめの技法を会得したのさ」

「殴った相手が死ぬようなパワーをお互いが持ってたら、きっと子供でも争いを避けるよね」

「あまり変わらないかー」

「妄想に妄想を重ねてわかりづらくしてるだけ」

「大人だろうが子供だろうが、権力者だろうが庶民だろうが、みな等しく所有欲の奴隷ってことね」

「くっそ~、自分の人生だっていうのにぃ!」

一同「はっはっは」


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閉塞感に包まれた中学生たちの憂鬱

「退屈だ」

「退屈だな」

「なんでこんなに退屈なの?」

「毎日同じだからじゃないか」

「何も起こらないんだよな、学校でも、人間関係でも」

「反復でしかないわけだ」

「厳密には同じじゃないだろう。やってることも少しずつ違うし、人間だって日々変化しているよ」

「けどお前も退屈だと思ってんだろ?」

「うん、退屈だ」

「退屈じゃないって思える程度の差異が無いなら、ただの反復とみなして問題ないだろ」

「気晴らしもマンネリ化してるし、人間関係も儀式的な「笑い」で満ち溢れている」

「「やりたいこと」云々の問題でもないんだよな」

「「やりたいこと」なんて大人が用意した「お話」でしかないだろ」

「だね。連中、「お話」を使って自分たちの世界に引きずり込もうと考えてるわけだ」

「若者が大人の娯楽や大人の世界に憧れる類の「お話」は露骨すぎるね」

「酒、タバコ、セックス、自動車。最近では起業とかもあるね」

「大人になっても辿りつく地点がこれだからな」

「うん。本当に絶望的な気分になるよ。凡人の創造力なんて所詮その程度なのかあ・・・って」

「「人生やってらんねー」とか言ってダラダラ過ごす中学生を責めるのもいいけど、中学生がそう思う理由を少しは考慮してほしいな」

「だね。自分の未来を直視させられる身にもなってくれよ」

「憧れるかっつーの」

「まあ、多くの中学生は憧れてるんだけどね」

「自分がなんで苛立っているかを考察できないから、「サラリーマンになりたくねえ!」とか言って適当に反抗してみるんだけど、その裏では憧れてるんだな」

「反抗の仕方も「お話」で用意された通りなんだよね」

「結局は大人の思い通りってわけだ」

「あまりにも退屈だから手っ取り早く「楽園」を欲するようになるんだよ。で、大半はこの衝動に負けちまうってわけ」

「外にいることのデメリットばかりつかまされて、メリットが全然活用されていない」

「外?デメリット?メリット?順番に頼む」

「中学生は大人世界の外にいるわけだろ。政治にしろ、労働にしろ、娯楽にしろ。まあ、大人世界に順応するための学校生活やそこでの人間関係なのだから、大人世界と中学生世界にもそれなりに類似性があるわけで、とすると片足は内で片足は外というところか」

「で、その状態のデメリットとは?」

「目くらましをくらいやすくなる。だめだよ、だめだよって言われたら、地獄も魅力的な楽園に思えるんだ」

「大半の中学生はくらっちまってるのか。で、メリットは?」

「大局的な視点。これは大事だよ、なんせ両足突っ込んだら失うしかないからね」

「中学生が大人の世界=社会に対して何か言うと、「経験の無い奴がわかったような口をきくな!」ってなりがちだけどね」

「それも「お話」の話だろう?」

「いずれにせよまともに取り合おうとはしないだろう。外にいて経験してないからこそ全体の構造がみえてくるってのはそうなのかもしれないが、大半の中学生は「お話」に取り込まれてるから」

「何か言ってきてもそれは「お話」で覚えたことなのだから、「お話」の作者たちにとっては何の価値もないね」

「メリットを活かす前に「お話」で釣られちまうのかー」

「そうそう。結局は学校や人間関係の反復に順応し、ため込んだ鬱屈を気晴らしで解消するようになる。「反復-気晴らし」という二重の反復に耐える術を身に付ける道を選ぶんだ」

「気晴らしも反復だから、「反復-反復」という三重の反復だろ」

一同「はっはっは」

「まじめな話、サラリーマンになりたくねえ!のは怖いからだろうね」

「なにが?」

「飢餓感だよ」

「お金がない!」

「時間がない!」

「ローンにせよ長時間労働にせよ結婚生活にせよ子育てにせよ、目先の問題が日常を支配するようになって、反復を反復と思わなくなっていく」

「目の前の刺激に気を取られ、本来の目的を忘れる。思い出すときにはお金も時間もなくなっていて、反復の連鎖に絡めとられている」

「その中でもがき苦しみ、もう抜け出せないと諦めたとき、家族のため、働くことが人生、成長、こういったぼんやりした使命感と溶けて一体化するんだ」

「怖いな」

「落とし穴はそこらじゅうにあるからね」

「怖れているのに、結局「お話」でごまかされるんだ」

「「お話」で釣られて、気づいたら飢えている」

「反復にはまり込んだことにも気づかぬまま、死ぬまで抜け出せないんだ」

「働くのが嫌なわけでもなければ、大人との関わりやそれに伴う責任が嫌なわけでもないんだ」

「ただただ怖い」

「自動車が欲しいと思うようになるのが怖い」

「酒が飲みたいと思うようになるのが怖い」

「お金が足りないと思うようになるのが怖い」

「働きたいと思うようになるのが怖い」

「結婚したいと思うようになるのが怖い」

「時間がないと思うようになるのが怖い」

「多忙を充実と思うようになるのが怖い」

「怖いから大人になりたくない」

「けど大人にならざるをえないよね」

「大人にならざるをえない世界が怖い」

「何もしないと貧しくなって、強制的に大人にさせられるね」

「何かしても大人になるね」

「大人になったらなんになりたい?」

「子供になりたい」

「このやり取りは何回目?」

「540回目ぐらい?」

一同「はっはっは」


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Author:遊民
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