懲らしめ願望の災厄に悩む中学生たちの憂鬱

「あ~あ、朝からゲンナリするわ」

「どうしたの?」

「駅で政治家だかなんだかが演説してなかった?」

「あれか」

「みんな社会に貢献しなければなりません!ってやつね」

「ニートや無職を飢えさせろって言ってるのを聞いたよ」

「ああいうの、国民にもけっこう支持されてるっぽいんだよな。くそっ、イカれた共産主義者共め」

「こういう、なんていうか、懲らしめ願望みたいのは、多くの人に備わってるみたいだよ」

「ほんとに?」

「最近心理学の本読んでないからうろ覚えなんだけど、公共財ゲームってやつの実験があってね。4人だかが集まって各自に1000円が与えられる。被験者は投資するかしないか、するならいくらするかを決める。投資すればその金は倍になって全員に均等に分配される。これを何回か繰り返す」

「みんなが投資するのが一番良いけど、自分以外に投資させるのが一番得になるね」

「ざっくりとそんな感じ」

「懲らしめはどこに出てくるの?」

「ゲームが終わったときに自分の金を払って協力しなかった人間を罰せられるようにすると、けっこうな人たちが罰を与えたらしいんだ」

「損をしてまで懲らしめるんだ」

「懲らしめることで損を上回る満足感を得るのか」

「懲らしめは快楽・・・」

「ニートや無職が働けば経済も成長して税収も増える、みたいなバラ色のストーリーも懲らしめ願望を正当化するためのものかい」

「働きまーすと言ったら労働需要が新しくポンと生まれるらしいからね」

「生活が良くならない。テレビやネットには世界がどんどん悪くなってるって情報ばかり。こんなに努力しているのに、おかしい!悪い奴らがいるんだ、許せない!懲らしめてやらなくちゃ!」

「懲らしめ願望が刺激されやすくなってるんだ。そんでその欲望を察知してか知らんが、「懲らしめ」に誘導するストーリーが様々な媒体で撒かれている」

「この会話も気を付けないとね」

一同「はっはっは」

「まじめな話、生活が良くならないのは自分たちが労働市場に留まり続けるせいで労働者が供給過剰になってるから。サビ残や給料以上の働きをして労働単価を切り下げてるから。長時間労働をして消費する時間がないから。つまり懲らしめさんたちが「努力」してるからだろ」

「ネットではニートや無職には何を言ってもいいって感じだよね」

「汚い言葉を使うときにはやっぱりそれなりの心理的負担があるだろうから、その分だけ快楽も大きくなるのかね」

「懲らしめを盛大にすればその分だけ快楽が増えるという単純な話では」

「「損をしてまで懲らしめる」っていうより、「損をして懲らしめる」ことが快楽なんじゃないか。こんなに貢献しちまったぜ!みたいな」

「損や負担を我慢して懲らしめたときの方がより大きな快楽を得られる・・・」

「自己犠牲的懲らしめとでも名付けようか」

「社会保障カット+法人税・所得税減税+消費税増税なんてのもこれじゃないの。損や負担を我慢して悪い奴ら=弱者を懲らしめてるわけでしょ」

「ネオリベは自己犠牲的懲らしめ願望をエネルギーにしてるのか」

「この願望は大きなエネルギーを生むよね。小泉元総理が「痛み」とか「既得権」なんて言葉を使ったのもこの願望に訴えたかったからかな」

「狙ってやったかはわからないけど、確かに大衆は熱狂してたと思う」

「「アベ政治を許さない」ってのも懲らしめ願望かな。まあ、自己犠牲の要素はなかったけど」

「あってもダメだったろうね。野党を懲らしめたいって人の方が多かったんだから」

「「懲らしめ」が目的化してるんだよね。誰かを懲らしめて何がどう変わるかなんてこと、誰も考えてないんだよ。ただ懲らしめるためだけに適当なストーリーを作って、誘導して、そんで懲らしめて終わり、自分たちの首を絞めて終わり、何一つ良くならずに終わり」

「社会に貢献しろ!とか言う奴は、実際には「社会のため」なんて考えてないのよね」

「考えてるかもしれないけど、相応の知能と能力が無い人間が「~のため」なんて考えて行動しても悪を為すだけってこと」

「個人や弱者を虐げるだけ虐げて、身勝手な「努力」に陶酔し、ダメなのは全部あいつらのせい!懲らしめてやる!だもんね」

「そんで「懲らしめ」からも快楽を得ると」

「やってらんないなぁ。懲らしめさんたちには迎合したくないもんだね」

「けどまあ、おとなしく従って働く以外に道はないよ」

「どうして?」

「懲らしめさんたちが生活を破壊するから」

「あーあ、結局は破壊に加わり、懲らしめに縋って自分を慰めるしかないんだね」

一同「はっはっは」


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勤労意欲が湧かない中学生たちの憂鬱

「働きたくない」

「急にどうしたの?」

「将来、働く。この現実を受け入れられない」

「だからどうしたの?」

「自分のこととしてこの問題を考えると、どうしても受け入れ難いんだ」

「そうは言っても、働いて社会に貢献しなきゃいけないらしいからね」

「完全に他人事じゃないか」

「賃労働にそういう意味を見出すのは勝手なんだけど、それを規範にして押し付けるのはやめてくんねぇかなあ、とは思う」

「過剰な意味だもんね」

「どういうこと?」

「「社会貢献」って会社というシステムが利益を上げるための活動をした結果がそう評価されただけの話で、賃労働と社会貢献はあまり関係ないんじゃないのってこと」

「会社の売り上げ目標なり戦略なりがあって、そいつを予算や技術の制約下で実現し、計画通りの利益を出すと。その過程で現状では機械より人間がやる方がいい(ってことになってる)部分があって、その分が労働需要になると。金を求める人間が会社の労働需要の一部を満たすと。それ以上でも以下でもないだろ」

「賃労働を「社会貢献」に変換しているのは会社というシステムってことになるよね。たとえば一人で全ての労働需要を満たしたとしても、「社会貢献」の度合いというか、総量のようなものは変わらない。会社によって規定されているからね。「社会貢献」の主導権を握っているのは会社なのであって、それを実現することは「社会貢献」ではなくあくまでも賃労働なんだよ。まあ、一人でやってくれたら人件費も減って労働単価も切り下げられるから、経営陣や株主には貢献したことになるのだろうけど」

「それに会社の目標なり戦略なりを実現した結果が社会貢献なのかどうかはやる側が判断することじゃないし、やっぱり賃金と引き換えに会社の労働需要の一部を満たすってだけの話だよ」

「「社会貢献」ではなく「会社貢献」ってことか」

「サービス残業なんかも経営陣の杜撰な計画のツケを従業員が払ってるわけだから、会社に貢献しているだけだね。酷い話だよ」

「なんせ生存を人質にとられてるもんな」

「生きるためには働いて稼がねばならない」

「だから労働がお金を生んでいる、みたいな話が出てくるのかなあ」

「賃金に充てるお金は労働するしないにかかわらずあるのにね」

「成績と賃金が連動するとこもあるみたいだし、そのせいもあるんじゃないかな」

「賃金、低く設定されているんだろうね。何人かが「上昇」してもトータルでは低く抑えられるように。あるいは非正規の人の賃金がその分以上にカットされているか」

「「給料以上の働き」を称賛するのも考え直した方がいいよね」

「どうせ働くなら~、じゃねーよな。勝手に一人でやってるだけならともかく、労働価値の低下は他の労働者に悪影響を及ぼす」

「搾取ってこういうことだね。鞭でぶっ叩いて働かせるんじゃなくてさ」

「ほんと労働はやりたい人だけでやればいいよ」

「それにしても強制労働に対してなぜかくも好意的になれるのか」

「生活費は?」

「働いて稼ごう!」

「勉強は?」

「働くために頑張ろう!」

「学校は?」

「働くために行こう!」

「奨学金は?」

「働くために借り、働いて返す!」

「趣味は?」

「働くため!」

「睡眠は?」

「働くため!」

「食事は?」

「働くため!」

「ストレスは?」

「我慢して働こう!」

「障害は?」

「受け入れて働こう!」

「うつ病になったら?」

「さっさと治して働こう!」

「治療費は?」

「働いて稼ごう!」

「自由は?」

「働き尽したその先にある!」

「まあ、死んだら自由だわな」

「自分のこととしてあらためて考えてみると、ヤバイとしか言いようがない」

「意味を作らないとやってられないね」

「そんな簡単に迎合したら向こうの思う壺だよ。なんでニコニコしながら「社会貢献」なんて言葉を用意していると思う?」

「これが大衆社会だね。「社会のため」「お客様のため」「国民のため」、一見すると全てが「大衆のため」に大衆を中心にして回っているかのようで、実際は労働者として、消費者として、国民として、人生と金を吸い上げられている」

「綺麗事で釣って幾重もの網でからめとり、会社の計画の範囲内で「主体性」を発揮させ、そこに過剰な意味を与え、「みんな働いて社会に貢献すべき」って思想に没入させていく。それが実際に社会貢献かどうかはおかまいなしで」

「手前勝手な判断と思い込み 保証し合って慰め合い」

「受け入れない奴は貧困生活に強制連行」

「基本的人権ってのはどこにあるの?」

「働き尽せばいただけるって噂」

一同「はっはっは」


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読みたい本が山積みなのでニートしてます。

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