最賃1500円になったら、わいら救われんの?

「なぁ、最賃1500円運動、どう思う?」

「どうって?」

「これでわいら救われると思う?」

「わからんけど、得ではあるんとちゃう?わいら、今まさにその最賃で生活してるわけやし」

「せやけど雇われなかったら意味ないやろ?」

「うん」

「最賃の話に気ぃ取られて、そこが変わらんまま放置されたらやばいと思うんよ」

「う~ん?」

「Aさんが毎日のようにサビ残しとるの、お前も知ってるやろ」

「知ってるけど、それがどうしたん?」

「Aさんにはもうここしかないってこっちゃ。わいらはまだ若いから次の仕事がみつかるやろうけど、Aさんの年になったら中々みつからん。そんで当たり前やけど、わいらもいつかAさんと同じ年齢になるんや」

「せやなぁ。けど、だったらなおさら1500円にしてもらった方がええんとちゃう?これで少しは貯金できるやろし」

「1500円なんて焼け石に水やで。シフト減らされるかもわからんし、そこそこ貯金できたとしても、Aさんみたいな働き方して身体か精神壊してもうたら一発で崖っぷちやん」

「シフトかぁ。Aさん、今でも一人で三人分は働いとるし、もっと命削れば五人分はいけるやろなぁ。それに、Aさんだけやのうて社員さんらも気張ってくるかもわからんしなぁ」

「法律や将来なんかより目の前の雇用の方が大切やからな。そのためなら自分から進んでなんでもするわ」

「おかしくならん方がおかしい感じやもんなぁ。わいらもいつかああなるんかぁ。はぁ、今から生活ちゃんとしとかななぁ」

「若いうちはいい加減な生活でも大丈夫やけど、年取ってきたらそうはいかんもんな」

「いい加減な生活なぁ、直したいんやけどなぁ。仲間との付き合いがわいの支えになってるっちゅうか、むしろ仲間との付き合いのために働いてるみたいなとこあるしなぁ」

「せやな。けど、世間様はこの支えを「遊び」言うて絶対に許さん。遊ぶカネがあるのに貯金できんわけがない、悪いのは全部お前や!税金にたかるな!死ね!言うてくる。容赦ないで、世間様」

「わいらにとっての心の支えも、世間様にとっちゃただの「遊び」やもんなぁ」

「生活再構築ハ極メテ困難デアル」

「ここで「生活を立て直さなあかん。変わらなあかん。せや、きっと家庭持ったらわいも変われる。子供のために安定した職に就くようになる」なんて方にいったら、本格的に地獄やな。子供のためや!って尻叩かれて、文字通り死んでも働かされるで。わいの親、結婚すれば、子供できればって考えるとこあるから、気をつけんと」

「無視すんなや。まぁ、心の支えを仲間から家庭に変更するだけやからな」

「そうなんよなぁ、わいも、追い込まれてるんよなぁ、忘れてたけど。わいら、何かで支えんとやってけんぐらい、常に追い込まれてるんよなぁ」

「追い込まれないためにはいくらいる?最賃、3000円か?4000円か?」

「無理やろなぁ」

「1500円でも、お前らにはそれだけの価値が無いんやから仕方ない、1500円欲しかったら努力して1500円の仕事みつけろってなるもんな」

「そもそも賃金は打ち出の小槌とちゃうで」

「ということは?」

「最賃路線は死路や」

「雇われなかったら終わりっちゅうとこを変えんとどうしようもない。最賃が1500円になってもわいらは不安定なままやし、その不安定さをカバーできるだけの貯金ができるわけでもない。不安定さをカバーできないいじょう、わいらは必ず目の前の雇用にしがみつかなあかんようになる。そうなったら最賃も人権もないで」

「どっちも不都合を隠す煙幕やんな。特定の雇用にしがみつかなあかんって時点で、わいらには何のカードもないってことやろ」

「そうならんようにスキル身に付けろ言うけど、そんな都合の良いスキルなんて今でも稀やろうし、これからは技術進歩でなくなってく一方やわ」

「稀やから意味があるんやろ」

「わいらにそんなスキル身に付ける能力があるか?」

「そもそも、なんやねん、「スキル」って」

「現実とゲームの混同や」

「仕事っちゅうモンスターを毎日毎日コツコツ倒し続ければレベルが上がって必殺技が使えるようにぃなるかいっ!!ほんまもんのゲーム脳やん」

「お前は力25、素早さ30、メンタル18、賢さ5、総合人間力800円!」

「うわぁ~賢さ上げて総合人間力1500円まで持ってかなぁ~なんてことになるかいっ!!お前もソッチか、ゲーム脳か」

「かといって社員になれば安定して解決ってわけでもない。社員さんの働き方、わいらとは比べもんにならんぐらいえげつないわな?」

「ゲーム脳が悪い」

「ゲーム脳もうええねん」

「ほんならどうすればいいん?」

「カネ刷って配るんや」

「あかん、あかん。それこそ世間様が黙っとらんで」

「わいらには明日がある。しかし十年後はわからん」

「二十年後は多分ない」

「そういうこっちゃ。このままやと、わいら賃金に殺されるで?何としても黙らせなあかん。札束で横っつら引っぱたいて、黙らせるんや。このカネ税金ちゃうで?あんたらも貰えるで?だったら文句ないやろ!おらぁ!さっさと目ぇ覚まさんかい!腐った虚構に囚われた亡者共が!!カネの奴隷共が!!」

「おぉ、おぉ。せやけど、世間様の心配はインフレにあるんとちゃう?」

「モノが余りまくってどこもかしこも売りつけることばっかし考えとるときに、なんでインフレの心配せなあかんのや」

「世間様は悪党や廃人の増加も心配しとるで?」

「それはカネの問題ちゃうやろ。それにしても悲しい話やで。世間様の頭に住んどる「人」は「クズ」しかおらんのか」

「お前らには1500円の価値が無い言う人らも、ふて腐れた態度でダラダラやって何一つ学ぶ気の無い「給料泥棒」が頭にあるんやろな」

「ニート叩きも生活保護叩きも、想定されとるのは「クズ」やからな。世間様の頭にいる「クズ」を、ニートや受給者に当てはめるんや。当てはめは怒りを喚起し、怒りはリアリティを生み出す」

「わいらも「クズ」を当てはめられる側やからなぁ。はぁ、ほんま面倒やわ。こんな争い続けるぐらいならさっさと全員にカネ配った方がええわな」

「雇用や支援に執着しても、働いている/いないとか、なんたら障害がある/ないとか、あちこちに線引いてそれを強固にしてくだけや」

「富の分配に与れない者共が自発的に自分たちを分断してくわけやな。こりゃあかんわ」

「せやろ。わいらを救うのは最賃やない。カネや。雇用やない。カネや。ここを間違ったらあかん・・・・・・はぁ~あ、休憩終了や。あと4時間、頑張りましょか」

「・・・・・・なぁ」

「ん、どうしたぁ?深刻な顔して」

「うん、そんで、結局、わいらはあと何時間頑張ればええんやろな?」


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赤ちゃん界の夢

「ねえ、みて、本当にかわいい、私たちの赤ちゃん」

「ああ、これからはこの子のためにも頑張らないとな」

「ええ、この子には絶対に幸せになってほしい」

「うん、絶対に幸せにしよう」

突きつけられた現実は あまりにも正しすぎて あまりにも残酷で
虚無を夢と隠さんと 無我夢中 貪るしかなかった
確かな存在としての夢 気がつこうともしないまま
夢は夢を貪り 夢は夢を貪り・・・・・・
繰り返される 夢の形をした世界は綺麗?

暗転

「ひゃっ!?なに、停電!?」

「いや、停電にしては・・・」

「きゃーっ!!」

「なんだ、どうした!?」

「赤ちゃんが・・・いない・・・」

突如、二人から数メートル離れた所にスポットライトが当たる。先ほどの赤ちゃんが、よたよたと立ちながら、二人を凝視している。思わぬ事態に二人は呆然、声も出せずにいると、赤ちゃんは、ああああぅぁあうあうあうあ~と声を漏らしながら、みるみるうちに小学校高学年程度の子供に成長する。

「はじめまして、名前はまだありませんので、ここでは「あなた方の赤ちゃんです」と自己紹介させていただきます」

「・・・・・・なにこれ?」

「この世界は永遠が凝縮されていますので。ほら、このようなことも可能なのです」

パッと光が広がる。巨大な、真っ白な空間。無数の人。様々な年代の無数の人。二人を取り巻く無数の人。その一人一人が、ジッと二人を凝視している。

「みんな「私」ですよ」

「・・・・・・え?」

「みんな!」

子供がパン!と手を叩くと、「私」たちは統率された滑らかな動きで、あっという間に果てまで続く一列を形成する。

「時系列順にみればよくわかるでしょう?」

「私」たちはコンベアで運ばれるロボットのように規則的なリズムで、二人の面前を「時系列順」に通過してゆく。

「今はちょうど20歳ぐらいですね。どうです、これで納得していただけましたか?」

「何も納得できませんけど?一体なんなんです、ここは?」

「なるほど、なるほど。ここは赤ちゃん界・・・・・・といっても、ここに来たことのある人間はほとんどいないから、耳にしたこともないでしょうし・・・・・・どう説明すればいいのか・・・」

「ほとんどいない、ということは、ボクらは選ばれたということ?」

「きっとそうだよ!子供をちゃんと幸せにしてあげられる親には、こうやって未来の子供がプレゼントを持ってきてくれるの!」

やかましい!!という怒鳴り声。二人は驚いてあたりを見回す。子供はため息を吐き、列に目を遣る。

「まだ説明が終わってませんよ、30歳の「私」」

列から一人の「私」がぴょんと飛び出ると、一瞬で子供の隣に移動する。30歳の「私」は二人をキッと睨みつけている。

「勘違いすんな、このドアホ共が!いいか、「私」たちは使命を帯びてここにいるんや。他の「私」たちにはできひんから、「私」たちがやらなあかんのや!」

「なんだお前は!ボクらはお前みたいな奴を育てるつもりはないぞ!」

「言葉遣いもおかしいし、あれは私たちの子供じゃないよ」

「区別のためや、アホ。お前ら、「時系列順」の「私」を見て何とも思わんかったか?」

「ただすくすくと育っているようにしかみえなかったがね」

「あかんわ。ここまでしても、人間が死んでいくのを感じ取れない、これじゃどうしようもあらへん。なあ、「私」が 人間 を辞めて 賃金奴隷 に変わっていくのが本当にわからんのか?」

「賃金奴隷!そんなことを言う人間に育てるつもりはないぞ!」

「やっぱり私たちの子供じゃないよ。どこかのチンピラが間違って迷い込んだに決まってる。さ、早く出ていってください、これからここで私たちの歓迎会が行われるんだから」

「悲しいかな、あんたら労働者が身に付ける技は、安息の環を壊す、それでも、世界を言語で誤魔化すか、現実を夢とすり替えるか、言語と夢に縋って他人を求めるか」

誰が言ったかはわからない。一列に並ぶ「私」たちは、ジッと、ただジッと、二人を凝視していた。

「誰だ!親に向かって「あんたら労働者」だと?クソ!そんな人間に育てるつもりなんてないのに!おい、そんなに働くのがいやなのか!?」

「働く働かないに関わらず 労働者 は 労働者 ですから、働くのがいやとかそういう問題ではありませんよ」

「ねえ、この子もちょっとおかしいんじゃない?本当に私たちの子供かしら?」

「ああ、きっとたちの悪いイタズラか何かだろう」

「あんたら、「私」を「幸せにしよう」言うたよなあ?」

「子供の幸せを願うのは当然だろ?まあ、それはお前じゃないがな」

「子供を幸せにしよう。ところで、う~ん、幸せにするとはどういうことか?生きるためには無駄でありかつ悪でもある労働に従事せねばならないいじょう、不毛な競争に勝ち続けられるようにすることか?あるいはつらく苦しい無意味な日々に「意味」を見出し耐えられるようにすることか?しかし、こんな世界に、どうしてわざわざ?「強制労働」や「労働のための労働のための労働・・・・・・」という認識がなかったとしても、どうしてわざわざ?会社本位の生活リズム、会社本位の人間関係、会社本位の人生、本能の抑圧が約束された世界に、どうしてわざわざ?互いを踏みつけ合うだけの世界に、どうしてわざわざ?人間を辞めなければならない世界に、どうしてわざわざ?矛盾も罪悪も葛藤も感ずることなく「働いて自立せよ」と申し渡す人間が、どうしてわざわざ?」

誰が言ったかはわからない。が、その声は列の遥か後ろの方から聞こえたような気がした。一列に並ぶ「私」たちは、瞬くこともなく、ただ涙を流していた。

「なあ、なんなんだ、あんたら一体?ボクらはそんなにいけないことをしたか?子供ができて、その子供の幸せを願う、それってそんなにいけないことなのか?人間としての感情が、そんなにいけないことなのか?」

「うっ・・・うっ・・・ひどすぎる・・・そんなこと言って私たちを責めても・・・子供を産む意味がなくなってしまうだけなのに・・・」

「「子供を産む意味」ですか・・・・・・それでもまだあなた方に「人間としての感情」が残っていると?」

「私の子供があんたみたいに性格の歪んだクソガキになるはずがない!さあ、もう下らないイタズラは終わりにしてよ!こんな気狂いの妄想を聞かされたって、腹が立つだけ。私たちのかわいい子供は、たっぷりと愛情を注いで真っ当な人間に育てますから、ご心配なく」

夢でできた皮に 愛情をたっぷり注ぎますと
あら不思議 黒い液体となって
ぽたぽたと滴り落ちてくるのです
これは歪んだ性格のせい?
かわいいのは かわいい頃だけで
それでも常識が優先されます
慰み者になった気分は幸せ
これも歪んだ性格のせい?

それとも愛情に似せた愛情のせい?

「お二方、どうやらお帰りのようです」

「私」たちは統率された滑らかな動きで、あっという間に二人を取り囲むと、決死の形相で絶叫しはじめた。目をカッと見開く者、ただただ涙を流し続ける者、天を仰ぐ者、地団駄を踏む者、表面的な違いはあれど、みなそれぞれの必死さを、最後の機会とばかりに、全身全霊をもって表現している。

「生け贄を!」
「産み落とせ!!!」

「地獄(ここ)に!」
「産み落とせ!!!」

「奴隷を!」
「産み落とせ!!!」

「生命を!」
「くべろ!くべろ!くべろ!」

「人生を!」
「換金!換金!換金!」

「罪を知らぬは!」
「獄卒共!!!」

「悪と知らぬは!」
「鬼畜共!!!」

「さあさあ世間様!手塩にかけて「投資」いたしました、新品の賃金奴隷にござります!」
「競争協調目的合理!
労働自立意味効率!
将来経歴自己利益!」

「うわああああ!!!やめろ!!やめろ!!」

「そうさ、所詮こんなもんだ。あなた方はきっと「忘れる」。拒絶するか、適当な解釈でわかった気になるか、メタな批評でもして悦に入るか、いずれにせよ、「忘れる」ための努力をし、実際に「忘れる」ことに成功する。まあ、なんでもいいさ。責められているとしか感じないのならば、そのままそう感じていればいい。こっちも、また、甘えているんだから。ははは、これが「私」たちにとっての「貪る夢」か」

暗転

「ねえ、みて、本当にかわいい、私たちの赤ちゃん」

「ああ、これからはこの子のためにも頑張らないとな」

「ええ、この子には絶対に幸せになってほしい」

「うん、絶対に幸せにしよう。そのためにも、愛情をたっぷり注いで、真っ当な人間に育てような」

ネガオガ トッテモ カワイイノ
カケイガ クルシクテ コマッテルノ アッ! アナタハ ソンナコト キニシナイデ
メガ クリクリシテイテ カワイイネ
ダイガクヲデテ チャント ハタラケ
コノコノオカゲデ アシタモ ガンバレルヨ
オマエニハ タクサン トウシヲシタノダカラ ハタライテモラワナイト コマル

滴る夢の命は綺麗?


訪問布教者

「突然お伺いして申し訳ありません。私たち、定期的に神様の御言葉を学ぶ勉強会を開いているのですが、こうしたことに興味はございませんか?」

「神様の言葉?」

「ええ、すぐそこでやっているので、どうですか?ちょっと見るだけでも」

「神様って言葉を発するの?」

「神様は私たちが正しく善く生きていけるようにと、教えを言葉にして与えてくださったのです」

「ということは、神様って人なんですか?」

「ええと、まあ、勉強会にきていただければ、そうした疑問もきっと解消しますよ」

「少し前にね、散歩にでかけたんですよ。そんでボケっと歩いてるとね、いつの間にか足元にトカゲがちょろちょろしてて、私が気づいて立ち止まると、トカゲも一緒に立ち止まったんです」

「はあ」

「しゃがんでしばらく一緒に過ごしてるとね、ああそういうことかと、ちょっとした悩みが解決してしまった。すると、感謝の念がどんどん溢れ出てきて、なんと有り難いことかと、私は涙を流していたのです」

「はあ、それが何か?」

「このトカゲは神様ではないのですか?」

「え?ああ、うん、それはどうでしょう?うん、神の使いとか、そういうことならあり得るかもしれません」

「神様が使わせたんですか?」

「そういうことになりますね」

「やっぱり神様って人なんですか?」

「いや、うん、どうなんでしょう?」

「ここ、大事な所じゃないですか。「神」をどう感じているか、ここですよ。あなた、無意識のうちに人のようなものと感じてるでしょ。だから、トカゲをただの使い走りにしてしまう」

「じゃあどう感じればトカゲは満足するのですか?」

「トカゲも神様なんですよ」

「あの、「も」というのは?」

「神様はそこら中にいるんです」

「あなた、神様を冒涜するつもりですか!」

「「神」を確たる存在者のように感じてはいけないのです。神は無限であると同時に無でもあり、無であると同時に無限でもある。神とは「世界そのもの」であり、先日の私は縁あってご一緒したトカゲのおかげで「神」を感じることができたのです」

「「トカゲのおかげ」ということは、トカゲは神様じゃないんだから、別に使い走りと考えても構わないじゃないですか」

「いけません。トカゲは神様じゃないと同時に神様でもあるんです」

「ふざけないでくださいよ!無限であり無であるとか、神様じゃなく神様だとか、一体どっちなんですか!」

「出発点を間違えているから、そうした「決定」への強迫観念が生じるのです」

「はあ?あのー、そうすると一体私たちは何を信じればよろしいのでしょうか?「自然」ですか?」

「わざわざ「対象」を拵える必要はないのです」

「それじゃ信じようがないじゃありませんか」

「そもそも「信じる」必要なんてないのです」

「へ?」

「たとえばある動物を「信じる」対象にしてしまったら、他の動物はどうなりますか?」

「そうは言いましてもね・・・・・・」

「あなたの言う「信じる」はですね、何かを「対象」として措定し、他と区別し、特別扱いするってこと、つまり「選別」するってことですよ。「信じる」に「他を排する」思想が含まれてしまっているのです」

「私たちは寛容と友愛の精神を実践し、神のもとの平等と平和を志向しています」

「ですから、わざわざそんなことする必要ないんですよ。暴力の芽を内包する「信じる」に執着するからこそ、そうした「教え」を用意せねばならなくなる」

「しかし、何かを信じ、何かに縋らないと生きていけない、そんな苦境にある人々に信仰という拠り所を与えるのは、善いことではないでしょうか?」

「弱者の拠り所としてにせよ、強者による支配・統治の道具としてにせよ、何か「対象」を拵え、「信じる」を導入してしまったら、迫害と抑圧の連鎖から抜け出せなくなるのです。倒錯は倒錯を生む。争いと暴力は激しさを増し、支配はより巧妙になり、排他と迫害は陰険さを極め、抑圧は心の奥深くにまで及ぶ」

「では一体どうすればよろしいのですか?何かを信じないと、人は生きていけないじゃありませんか!」

「いいですか、私たちは神様に包まれている。わざわざ「信じる」必要はないのです。そう感じるからそう感じ、祈らずにはいられないから祈る。ただ「必然」なんですよ。これは運命・宿命とは違う。あるのはその瞬間への洞察だけであり、諦念でも甘受でも期待でも熱狂でもない」

「あなたさっき悩みが解決したとか言ってませんでした?」

「しかし自分から求めたのではないのです。何かを求めるのでもなく、何か目的を持つのでもなく。それはきっかけにすぎない。「世界そのもの」を感じられる必然的瞬間に巡り合えたら、有り難く頂戴する。きっかけをくれた相手に感謝する。ただそれだけのことなのです」

「もういいです・・・・・・よくわかりました・・・・・・帰ります」

「迫害と抑圧の連鎖は私たちを絡めとる巨大なシステムと化し、システムはシステムを支え奉仕する精神を持つことを人々に強いる。システムは肥大し、精神は一段と歪み・・・・・・。私たちのすぐそばにいる神様を感じることさえできなくなってしまったのは、本当に嘆かわしいことであります」


パレードの過ぎし後

「この表現はいかがでしょう?」
ときみが教えてくれた
感情にのまれるまま 無意識に彷徨い
疲れ果て 座り込む
そんなとき
気が付くといつもきみが傍にいて
きみの言葉を少しだけ分けてくれるんだ
温かい気持ちが広がって 涙が零れる

(イチ、ニ、イチ、ニ)

「また迷ってしまったんだね?」
ときみたちが助けてくれた
闇に包まれた道を きみたちがポッと照らしてくれる
光舞う ヒラヒラ はじけ キラキラ
きみたちと空を歩く
天の川 仰ぎ 見下ろして 街
温かい光に守られて 眠りに落ちる

(イチ、ニ、イチ、ニ)

ふと見上げると きみが雲と戯れていた
遠すぎて声が届きそうもないから
水たまりに映るきみに話しかけるんだ
一緒に遊ぼう
風に揺られて姿を変えると きみはひゅっと走り出す

イチ、ニ!イチ、ニ!
なんだぁああぁ~!??!おい!列を乱すな!腕を振れ!
それ、イチ、ニ!イチ、ニ!

あの子かわいいよねぇ~
あの人かっこいいよねぇ~
あの子あの人が好きなんだってぇ~
あいつうざくねぇ~
あれ買ったんだぁ~あれあれぇ~
あれかわいいよねぇ~
あれオシャレだよねぇ~
あの番組みたぁ~?
あの歌マジいいよねぇ~
あれやばい泣けるんだけどぉ~

みんなと同じであることを誇りなさい
みんなと違う個性を誇りなさい
もっと右にいきなさい
もっと左にいきなさい
もっと速く走りなさい
もっと遅く歩きなさい
飛びなさい
地に足を着けなさい
沈みなさい
昇りなさい

早く!早く!もっと早く!
手を動かしなさい!サボらない!勉強を好きになりなさい!
早く!早く!みんなに置いていかれちゃう!
足を動かしなさい!ぼさっとしない!自分から仕事を探しなさい!

(雇われるために)同じになれ!
(雇われるために)個性を伸ばせ!
(雇われるために)頭を使え!
(雇われるために)投資せよ!
(雇われるための)能力を磨け!

あしたの せいかつ どうするの?
あんたの しょうらい どうなるの?
このよは たたかい せいぞんきょうそう!
おしごと いただき ありがたや!

競争協調目的合理
受験点数能力開発
早起き拘束部活動
監視演技不信閉塞
暴力陰口無視捏造
将来経歴自己利益
恋愛結婚勝敗面目
煩悩欲得執着保身
就職転職自他評価
税金年金借金家賃
飲酒無気力睡眠薬
残業抑うつ精神病
感情制御人間崩壊

えにし たやして もがけ ヒト

手足が動くたびに
溢れていた数多の色も 満ち満ちていた意味も
一つ また一つ 消えて
きみはどこかへ行ってしまった
きみたちはただの光に変わってしまった
さよなら
共に生まれた者たちよ
声を上げて叫んでも
灰色に枯れた世界には
もう誰もやってこない

きっと はじめからこうだったのだ
きっと ずっと こうだったのだ


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遊民

Author:遊民
読みたい本が山積みなのでニートしてます。

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