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未来人に裁かれる中学生たちの憂鬱

「あー、だりー」

「ほんとやる気でねーわー」

「毎日退屈でやってらんねーなー」

「・・・」

「・・・おい、おい」

「なに?」

「あそこにいる奴」

「どうかしたの?」

「今急に現れなかった?」

「うん、さっきまで何もなかったよね」

「はは、気づかなかっただけだよ。あんな奴みたことないし、存在感がないのさ」

「やあ」

一同「ひいっ」

「な、なんだお前!今あそこにいたのに、なんでここにいるんだよ!」

「跳んだから」

「はあ?」

「この小指に足をのせてごらん・・・いいからいいから・・・ひょいっと」

「あわわわわ、小指一本で・・・」

「君たちが言うところの「意図」に応じて最適な力を出してくれる。未来じゃ標準装備なんだな」

「みらい・・・き、気狂いだ!」

「あと30秒でそっちから体育教師Fが現れるよ」

「・・・」

「30、29、28・・・3、2、1」

「んん?お~い、おめぇらぁ、いつまで残ってんだ~?」

「先生!化物だ!未来の化物だ!」

「はあ~?お~い、おめぇ、なんだその制服の着方は?何年何組だ?」

「ほうほう、これが本物の体育教師か」

「お~い、それが教師に対する態度か~?」

「申し訳ありません。未来に教師はいないもので」

「はあ~?何言ってんだ~?」

「機械が個々人に最適な教育を提供してますからな」

「なにが機械だよ~、教育は人と人だろうが」

「機械への嫌悪感に「人と人」、ふむ、「頑迷な人々」か・・・。その「人と人」こそ機械が人間よりはるかにうまく対処できる領域になるのですけどね」

「はっはっ、無理にきまってんだろ~。社会はな~、人と人が働いて、支え合ってできてんだよ」

「残念ですが、未来には教師はもちろん、あなたの思うような労働者もいません」

「おめぇ、世の中舐めてんだろ~?働かないとな~、人間ダメになっちまうんだよ、社会なんてもん成り立たないんだよ」

「ダメになるのは「人間」じゃなくて「あなた」だということですな。現に未来社会はそれでも存続しているのですから」

「ダメになるにきまってんだろ~が!お~い、おめぇら、さっさと帰れよ、こいつやってらんね~よ」

「・・・あのう、今のお話は本当なのでしょうか?」

「本当だよ」

「しかし、だとすると、我々がこれからすることは一体何なのでしょうか?未来に少しばかり貢献したことにはなるのでしょうか?」

「ううん、君たちの大半はただ邪魔をしただけなんだな」

「・・・へ?」

「この時代の人たちは未来じゃ「頑迷な人々」と呼ばれている。飛躍の条件が整っているのに、機械を嫌悪し、人間がダメになるといって反発し、頭脳労働の権益を必死で守ろうとしたからね。これで進歩が100年ばかり遅れることになるんだな」

「おい、てめぇ調子づいてんじゃねーぞ。誰のおかげで誕生できたと思ってんだ?この時代の人たちが頑張ったからだろうが」

「それが?」

「なんだと?」

「未来じゃそんなことに関心を持つ人はいないよ。なんせ「私」という概念がとっくに過去のものになってるからね。それに、この遅れがなかったとしても「私」は誕生するんだな」

「嫌だ!そんな未来はお断りだ!」

「君たちがどう思おうと、受け入れられているからこそ存続しているんだな」

「そんな未来はおかしいよ!人間としておかしい!あなたたちの進歩は間違っている!」

「ふむふむ、じゃあどんな未来なら良いんだい?」

「そりゃあ、みんな一生懸命働いて、家族を持って幸せに・・・」

「あらら、まさか本当に応えるとはね」

「なにぃ?」

「未来人はね、この問いには応えない。なぜかって?応えられないからだな。応える能力が無いから。人間は直線的な思考しかできないし、おまけに「今」に強烈に縛られる。飛躍の積み重ねが未来であり、その世界は「今」とは別の世界さ。比喩ではなく、文字通りの意味でね。飛躍前の世界の住人が、しかもこんな思考しかできない住人が、飛躍後の世界を評価できるのかい」

「わははは!みんな、騙されるな!そうだそうだ、簡単なことじゃないか!未来の方々がここにこられるなら、もうとっくにたくさんきてニュースになっているはずじゃないか!」

「実験やデータ収集のために実際たくさんきているよ。誰も覚えていないのは混乱防止のため記憶消去を徹底しているから。まあ、万が一消去に失敗しても・・・」

「だいたいなあ!機械に頭脳労働やコミュニケーションができるわけないじゃないか!嘘も嘘、大嘘だ!」

「できてるんだから仕方がない。人間は失敗から学ばないで増長するけど、機械は失敗から学んで増長もしない。大抵の人間よりうまく素早く確実に相手から情報を読み取るし、それに「人と人」じゃなくて「人と機械」なんだから、君の思うような「コミュニケーション」は必要ないよ。いくつか事実を確認すればそれで十分だからね」

「わははは!なにが「事実」だ!つまんねー機械がなぁ、人間を超えられるわけないんだよ。人間はなぁ、プレッシャーや不安に立ち向かうとき実力以上の力を発揮すんだ、機械にゃそんなことできねぇだろうが」

「実力以上の力を発揮した人間よりも常にうまくやってくれるからこうなってるんだけど」

「に、人間には個性がある!個性が相互作用して生まれる成果を、機械如きが真似できるはずがないじゃないか!」

「君たちの言う個性なんてあってないようなものだってことは、とっくの昔に判明したよ」

「・・・あの~、それじゃあ私たちは一体何なのでしょうか?」

「別になんでもないんじゃないの」

・・・・・・

「あー、だりー」

「ほんとやる気でねーわー」

「毎日退屈でやってらんねーなー」

「なあ、何か覚えていないかい?」

「何かって?」

「・・・いや、なんでもない」

「ははは、何かが無いから退屈なんじゃないか。なあ、みんな、何も覚えてないよな?そもそも何も起こってないんだもんな?」

「うん、ただここで喋ってだけだ」

「ああ、何も覚えていないさ」

一同「はっはっは」


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