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もう手遅れ

「ねえ、これを見てくれよ」

「うわ、何それ、どうしたの?」

「わからない。ぼくも今さっき気づいたんだ」

「その位置にあって今まで気づかなかった、なんてありえないわよね」

「ああ、ごく最近できたってことだろうね」

「心臓の所にどす黒いあざ・・・」

「どうした、何か知っているのかい?」

「・・・ろーど病」

「なんだって?」

「私もよくわからないわ、ただ噂で・・・」

「それでもかまわないよ」

「できてから24時間が勝負らしいわ」

「勝負?それはどういう意味?」

「・・・・・・」

「まさか、死ぬとか?」

「命は死なないわ」

「どういうこと?」

「・・・・・・」

「オレ様の働きをバカにしてんのか!?おい、クソ女!てめぇ、オレ様が創った金で生きてる分際でなにだんまり決め込んでやがる!」

「はあ~」

「え、あ、ぼくは一体?」

「そういうことよ」

「くそっ、訳が分からない!とりあえず病院に行ってくる」

「いってらっしゃい・・・・・・その間に私は荷物をまとめておくわ」

「・・・さてと、とりあえず皮膚科でいいのかな。あのー、すいません、初診なのですが」

「申し訳ございません。皮膚科の方は大変混雑しておりまして、4時間ほどお待ちいただくことに・・・」

「4時間!?なんとかなりませんか?ぼくには時間がないのです」

「はあ、そう言われましても」

「昨日の朝着替えたときには胸にあざなんてなかったんです!昨日は、遅くまで残業して、深夜に帰宅して、そのまま寝てしまい、あざがいつできたかわからなくて、タイムリミットがいつかわからなくて」

「申し訳・・・」

「お~い、お前、オレ様の価値わかってっか~?オレ様の給料、時間に換算すっといくらかわかってっか~?4時間がこの社会にどんだけの損失をもたらすかわかってっか~?」

「はあ」

「おらおらおらぁ!お待ちになってるクソジジイにクソババア共、オレ様のために道を開けろや!なあ、なんも生産してないんだから当然だと思わねえか!?オレ様がお前らを生かしてやってること、忘れてんじゃねーだろうなぁ!?おい、損失の責任、お前らどう取るつもりなんだ!」

「ちょっと失礼します」

「なんだぁお前!?」

「警備の者です。こちらへ」

「あれ、ぼくは一体何を?」

「いいからこちらへ」

「は、離せ!」

「あっ、おい、待て!」

「・・・はあ、はあ、いったい何がどうなってるんだ・・・くそっ・・・こうなったら救急しか・・・ああ、なんでこんなことに・・・うっうっ・・・」

「はいこちら・・・」

「大変なんだ!胸に黒いあざができてしまった!早く助けて!」

「落ち着いてください」

「やばい病気なんですよ!いいか、このままじゃ社会がヤバイんだ!」

「はあ」

「はあ、じゃねーんだよ!お前、オレ様が給料以上の働きをしていないとでも言うのか?」

「何言ってるんですか?」

「お前は給料以上の働きをしてるのかって聞いてんだよ!」

「痛みはあるんですか?」

「ない」

「かゆみは?」

「ない」

「それでは・・・」

「うは、うは、うは。労働の邪魔にならないなら、いっか!」

「はあ?」

「あ、いや、その、ぼくは一体何を?」

「いたずらはやめてください。迷惑なので」

「待って!ぼくを見捨てないで!」

ツーツーツーツー

「・・・といった経緯でここにいるのですが、先生これは何なのですか?」

「ほぉ~、これは大変珍しいお話を聞かせてもらいました」

「この病気はそんなに珍しいのですか?」

「いや、そうではなくてですね、この病気は奥さんがおっしゃるように発症後24時間が勝負なのですが、とくに痛みもありませんから、多くの方は働いていて気づかずに何日も過ごしてしまうのですよ。それに、仮に気づいたとしても、きっとどこかにぶつけただけだろう、忙しいから後だ後、と無視してしまうわけですね。ですから、この病気が本格化するまでの、なんといいますか、移行期のお話というのは大変貴重なのです」

「それで、ぼくは治るのですか?」

「残念ですが、24時間経っているようですので、もう手遅れということに・・・」

「なんだとぉ!?おい、お前いくら貰ってここにいるんだ?なあ、ブタ野郎、給料以上の働きをするのが人間の常識だろうが!手遅れってのはどういうことだ?オレ様の働きが無意味だったと言うのか!?」

「いいえ、これからも思う存分に働き、社会に貢献することができますよ」

「うは、うは、うは。お前はオレ様と同じぐらい働いてるから、許す!」

「それはどうも」

「はっ、ぼくは一体・・・」

「まあ、そういうことです。大丈夫、すぐに慣れますから」

「慣れる、というと?」

「・・・・・・」

「あの、先生、慣れる、というのは?」

「大丈夫、死にはしませんから」

「先生、ぼくはどうなるんですか?」

「・・・・・・」

「先生!ぼくはどこにいってしまうのですか!?」

「・・・・・・」

「おい、医者!お前はどこに行くんだ?」

「もちろん会社に行きます」

「うは、うは、うは。正しい答えだから、許す!そんじゃな」


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