人間は商品ではありません、労働者です

~お知らせ~

みなさまご存知のように、当世界における人間とは、賃労働をして生きる存在であります。つまり、みなさまは一生を労働者として送るわけであります。そこで、みなさまの労働者ライフの質を向上させるため、「労働者としての価値」すなわち「労働力」を数値に換算し(※)、名前の代わりとすることが決まりました。とはいえ、みなさまはあくまでも労働者であり、商品ではありません。我々はその点を決して忘れることなく、より快適な労働者ライフ実現のため尽力していく所存であります。制度の変更に伴い様々な混乱が予想されますが、どうか新しい制度の必要性をご理解いただき、ご協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。

(※)「労働力」は能力ばかりでなく、日頃の行いや思想・信条も加味し、全人格的に判断いたします。


「なんだい、これ?」

「さあ。朝きたときにはもうあったんだよ」

「どういうことだ、「労働力」って?」

「現代社会において人間は商品にすぎない、ってことじゃないの?」

「冗談じゃない。いよいよ完全に奴隷にするつもりか」

「人間は商品じゃない!奴隷でもない!労働者だ!」

「おいおい」

「何言ってんの?」

「そういうの、好きな奴だけでやってもらえるかな?」

「その通りであります!人間は商品ではありません、労働者です」

「なんだ、このロボット?」

「私は「労働力」測定ロボ。早速みなさんの「労働力」を測定いたします。あなた、50万!あなた、20万!単位は「円」であります」

「ふざけるなよ!人間をカネに換算するなんて何考えてんだ!」

「ちなみに「ひと月当たり」であります」

「おい!なにが「労働力」だ!これじゃ完全に商品じゃないか!奴隷の競売だ!」

「あなた、5万!」

5万「きいてんのか!」

「おい、5万!うるせーぞ!おとなしく言うことをきけ!オレたちはなあ、一生働らい・・・働かせていただき、お給料として生活資金をいただくんだ。これが当然、人間としてあるべき姿。ということは、つまり「労働力」は「人間の価値」そのもの!それを具体的な数値として、教えていただける。我々としても、これによって目標・計画を立てやすくなるんだ。それなのに「奴隷の競売」なんてイチャモンつけやがって!少しは有り難いと思え!労働者の味方のみなさん、お心遣いありがとうございます!」

「あなた、100万!」

おぉ~~~~~~。

100万「どうだ!報われたぞ!オレの努力が報われたんだ!」

50万「おい、みんな騙されるな。奴隷に値を付けるような制度、許していいわけないだろ。それに、この数値、おかしいぞ。明らかに思想・信条が・・・」

100万「人間はみな労働者!なのに、労働者が商品?奴隷?となると、人間はみな商品、人間はみな奴隷、ということになってしまう!なあ、みんな、こんなバカな話がありえるだろうか!?」

「あなた、25万!あなた、105万!」

105万「わはははは、おい、25万!システムに盾突くなんて、労働者としての自覚が足りないんじゃないか?素直に謝った方が、身のためだぞ?」

25万「はあ?」

105万「あ~あ、一気に半分になっちゃった、おっきいよな~、将来のこと考えたら、困るよな~」

25万「ぐっ・・・うぅっ・・・素晴らしい・・・制度を・・・ありがとうございます」

「あなた、30万!」

105万「ふふん。5万も戻していただいたんだ、ちゃんと感謝しろよ。ところで20万、さっきから黙ってどうした?ええ?お前はこの制度、どう思うんだ?」

20万「ぼくは・・・ぼくは・・・」

5万「おい、タカシ!お前はタカシだ!20万じゃない!」

105万「ちっ、おい、5万!お前、そんな「労働力」で人間として恥ずかしいと思わないのか?一体、今まで、何してたの?なあ、20万、お前はどう思う?」

20万「ぐっ・・・ぐっ・・・ご、ご、5万なんて・・・信用できません!5万という数値は、よほど努力を怠ってきた証拠!人間として・・・人間として、何の才能も、価値も、無いのでしょう!」

「あなた、25万!正社員ラインに到達!」

105万「やればできるじゃないか!お前も、これからは正社員側の人間として、しっかり自覚を持つように」

「はいは~い、求人のお知らせで~す。誰か、月3万円で働ける人、いませんか~?めっちゃきつい仕事になりま~す。未経験者、大歓迎ですよ~」

105万「おい、5万、いけよ」

5万「なんだと?」

105万「はあ~、お前、人手不足の今がチャンスだってこと、わかんないの?だから、5万なんだよ。未経験者歓迎って、5万の人間に、こんなチャンス滅多にないよ?少しでも自己分析したことある?自分の立場わかってる?いいか、投資だよ、投資。お前、「労働力」を高めるために投資しなかったから、今こうなってんじゃん。働いて、スキルを身に付けないと、いつまで経っても「労働力」上がんねーぞ?いいか、働かないと「0」、いや、無為に年を重ねる分「マイナス」なんだよ。これと3万円分のお仕事をさせていただいて「労働力」を高めるのと、どっちが合理的だ?」

25万「将来どうするつもり?5万のままじゃ、キャリア形成できないけど、大丈夫なの?」

30万「君は、3万円の投資チャンスをみすみす見逃すのかい?それじゃ将来困るんじゃないかな?カネ稼げないと、やってけないぜ?食費は?家賃は?税金も、社会保険料も、どうするつもりだい?」

105万「そうだ!5万が死んだところで、社会的にはせいぜい5万円の損失!なにより5万なんざ掃いて捨てるほどあるんだから、取るに足らん!しかし、最低限の義務を果たさず、世間様に迷惑をかけるとなると、その損失は一体どれほどのものになろうか?働いて食っていくという人としての義務を放棄し、税金にたかり、一生懸命働く人の足を引っ張る行為は、社会にどれほどの損失をもたらすだろうか?」

「あなた、110万!」

・・・・・・

「次のニュースです。5万が長時間労働を苦に自殺し、それが過労による自殺と認定されました。なお、5万は月3万円で働いており・・・」

25万「経営者だ!経営者が悪いんだ!」

30万「ちくしょう!労働者を使い潰せば、会社は簡単に儲けられるんだ!」

110万「法律に違反する経営者を許すな!労働者を大切にしない会社を許すな!」

「はいは~い、求人のお知らせで~す。誰か、月2万円で働ける人、いませんか~?めっちゃきつい仕事になりま~す。今の生活を続けていくにはあなた方が必要って言ってくれる人はいっぱいいるけど、みんなおカネないって言うから、やむを得ず人件費を削ったよ~。未経験者、大歓迎ですよ~」

110万「おい、25万、いけよ」

25万「ええ!?」

30万「君、無職だもんね。人手不足のチャンス、2万円の投資チャンス、逃していいの?そういう消極性、「労働力」にも反映されてくるんじゃないかなあ。空白期間をいたずらに長引かせれば、君の「労働力」はどうなってしまうだろう?」

25万「うっ・・・うっ・・・」

「あなた、15万!」

30万「泣いてる場合じゃないぞ!君の年齢で15万、これが最後のチャンスなんじゃないかな?」

15万「がっ・・・がっ・・・ゲホ、ゲホ」

「あなた、5万!」

110万「おい、5万!吐いてる場合じゃないぞ!そんな「労働力」で、将来どうすんだ!世間様に迷惑をかけて生き延びるつもりか!よし、お前がその気なら、オレが世間様のお声を代弁してやる!「働かない言い訳を作っている暇があったら、素直に頭を下げ、働かせていただけ!やっすい、ゴミクズ程の命のために、大切な税金を無駄遣いするなんて、ありえないんだよ!!」」

5万「うっ、うっ、うわああああ!!」

30万と110万「すすめ!すすめ!すすむのだ!!」

5万「ススメ。ススメ。ススムノダ」

・・・・・・

「次のニュースです。・・・・・・」


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