文章が離れていく

たとえば書いた文字がそのまま飛んでいってくれたなら・・・・・・バカ野郎!!大切なのは現実だよ現実、現実をみろ、現実をみろ、現実をみろ、現実を、みろ、みろ、みろ。まずは現実をみないと話にならない。現実をみないと、困難を乗り越えられない。しかし現実をみるといっても、一体なにを?ほっほっほっ、バカがっ!!なぜ?この劣悪な脳で生きねばならないのはなぜ?なぜ?この劣悪な脳を持って生まれたのはなぜ?あーダメだ、切り替えろ、切り替えないと始まらない、いつまで経っても堂々巡り。しかし現実をみるといっても、一体なにを?あーあーあー、何回繰り返すつもりだ!

実際、これで何回目だろう?焦る、怒る、叩いて混乱、後、沈静化。原因不明、複雑怪奇?自分の無能をひたすら呪う。楽になろうと現実逃避。立ち向かおうと一念発起。しかし、なにに?痛む手をぼんやり眺め、ふと思う。何度も机を殴ったのに折れないなんて、骨ってのは本当に丈夫だなぁ。あれ、これで何回目だろう?あまりの頻度ゆえもう既にAの生活の一部になってしまった感さえある。

文章が離れていく。Aは物心ついた頃からこのことに気づいていた。書いている最中は「自分が書いている」という確かな手応えもあるし、推敲の際に読み直してもしっくりくる。文字はちゃんと自分の中に入ってくる。しかし書き終えてしばらく経ってから読むと、文字は中に入るのを拒絶し、スーッと離れていくばかり。おかしい。焦れば焦るほど文字はどんどん小さくなる。頼む、頼むよ、お願いだから。ゴマ粒ほどの大きさになった文字の群れが、ひょいひょいと飛び始める。

そのうちなんとか・・・・・・わらわら飛び回るきみたちは、そんな楽観じゃもう消えてはくれないの?ならいっそ本当に飛んでいってくれれば・・・・・・願い空しく文字の群はAにまとわりつく。手を伸ばせば逃げ、頭を抱えれば寄ってくる。なのに中には入ってこない。忌まわしい!!ドンッ、ドンッ、ひょいひょい、ドンッ、ドンッ、ひょいひょい。

やばい・・・・・・やばいよこれ本当にやばいどうすりゃいいの・・・・・・自分が書いたはずの文章を自分が書いた文章と感じられないって、どういうこと?内容や個々の表現の問題ではなく、なにかもっと根本的な、それゆえ掴みどころもなく、何が問題なのかも判然としない問題。自分の中の呼吸が書く段階でずれてしまっているのか、ってなんだそりゃ?適当な表現で誤魔化すことしかできないのぉ。

となると自分の無才を呪う他ない。幾ばくかの才能さえあれば、きっとこんな問題・・・・・・どうしようもないじゃないか!だって脳は変えようがないんだから・・・・・・え?脳は変えようがない?Aは戦慄する。脳は変えようがない。血の気が引いて脱力し、姿勢を保てなくなって机に顔面を打ち付ける。なぜだか全然痛くない。感覚がそちらまで回らないのである。

といことは、自分は生涯あいつらに付き纏われるのだろうか?そうだ、これが現実だ。なぜなら脳は変えようが・・・・・・いや、きっとみんな同じさ、これは言語に疎外された人間というもっと一般的な問題に含まれるのだから仕方ない・・・・・・で済むか!逃亡を試みたコンマ数秒前を悔やむ。この数十秒間の不毛を悔やむ。後を引き数時間無駄にするであろうことを悔やむ。あいつらの出現を許したことを悔やむ。生まれてきたことを悔やむ。過去も未来も現在も悔やむ。

くそっ!あまりに薄弱!これだから無能は・・・・・・いいか、仕方ないじゃ済まないんだここで踏ん張れ。踏ん張れ!脳がねじれだす。あぁ・・・・・・ぅっぅっ・・・・・・。理性で抑えつけるも、腹の底で蠢くものの一部が口の隙間から這い出てくる。理性を援護しようと頭を鷲掴みにする。矛盾のせいで顔面左半分は苦痛に歪み、右半分は怒りでひきつっている。溢れた衝動が右手に向かい、本の山を直撃する。バサバサと、山は音を立てて崩れた。あっはっはっはっ、あぁ、面白い、これがAの人生だ!ははははは、あぁ、滑稽だ、滑稽だ、笑い過ぎて、涙が止まらない。


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