ゲームをバカにする者はゲームの世界を生きる

「ゲーム感覚で学べる、ゲーム感覚で楽しもう、ゲーム感覚で・・・・・・」

「なにぶつぶつ言ってるんだい?」

「世間一般で使われてる「ゲーム感覚」って言葉が気に入らない」

「遊び半分でとかそんな感じ?」

「なんて言うかなぁ、ゲームを下にみてるというか」

「ふーむ」

「そもそもゲーム感覚でゲームをやったら負けの精神が身に付く」

「負けの精神?」

「たとえばポケモンの対人戦とかやったことある?」

「ちょっとだけ」

「何が一番大切だと思った?」

「やっぱり読みじゃないの?」

「読み切れば大抵は勝てるわけだからね」

「うん」

「けどいつも読み切るのは無理だろ?」

「そりゃね」

「むしろ読みが外れたり、想定外のことが起こったり、「読めない」ことの方が多い」

「読みを磨くにも限度があるね」

「読みが外れたら、君はどうなる?」

「あ~、動揺、焦り、苛立ち、集中力の低下」

「そうなってくるともう負けだろ」

「確かにね」

「つまり大切なのは、逆境に陥ったとき踏みとどまる力だと思うんだよ」

「展開が悪い時や思い通りにいかない時にいかに意識を保つか?」

「そうそう。だからそうなることを想定して準備しておく。事前にダメージ計算をして調整したりしてね。パニックになると「あれも、これも」と思考が空転し始めるから、事前にできるかぎり不安要素を潰して、土壇場で思考にかかる負担を減らしておく」

「それは何事においても大切だね。事前には「全部うまくでき(て)る自分」をイメージしがちで、そうすると「うまくできず慌てる情けない自分」を想定した準備が疎かになる。それとも準備が面倒だから「うまくできる自分」をイメージするのだろうか。まあ、どちらにせよこの環に嵌ると、相手や事態を舐めて誤魔化したり、「悪いことは起きない」と強がったり、「そうなったら仕方がない」と開き直るようになる。これもちゃんと開き直ってくれるならいいんだけど、実際にやばくなってから慌てだすんで困る」

「以前とあるオンライン対戦ゲームにはまったことがあって、これは上にいけばいくほど勝って増えるポイントより負けて減るポイントの方が大きくなっていくから、必ず訪れる悪い展開の時いかに「負けない戦い」ができるかが重要だった」

「君はどうだったんだい?」

「一番良い時でも最上位には入れなかった。自分の場合は、焦って一発逆転を狙いギャンブル的行為に走りがちだったんだ。「うまくできる自分」に執着しすぎて、「勝つ」から「負けない」への切り替えができなかった。これができないせいで制限時間を無駄にしてしまい、勝手に追い込まれてギャンブル、みたいな。カッとなってしょうもないミスをしてまたカッとなって・・・・・・という悪循環はあまりなかったけど、やはり切り替えができないときついね」

「たらればにも囚われる?」

「そうそう。「もっと早く決断できていれば」とか。「うまくできる自分」みたいなポジティブなイメージに執着してると、試合中なのに現実との落差で脳に余計な負担がかかるんだよね。それで我慢できなくなって、「たられば」とか「どうして」といった観念に思考が乗っ取られる」

「勝ちを積み重ねて上に上がっていくためには、土壇場で踏みとどまれるよう事前に「情けない自分」を想定して物心両面で準備しておくのが大切である、と」

「反省を踏まえて準備する際にも、「うまくできる自分」への執着があると、「結果的には最善手だったがその時点では絶対に選べなかった手」、言わば「幻想の最善手」を追ってしまうから注意が必要。(うまくできる)自分ならこの最善手を選べたはずだ、と考えると存在しないはずの意味やヒントをあちこちに見出してしまう。ポケモンの場合だったら、全てにうまく対処しようとして技や調整を変え始めると迷宮入りする。何かを選べば別の何かを諦めねばならない制約下でその都度「最善」を追うと、どこかで齟齬が生じ、その齟齬がまた別の齟齬を・・・・・・」

「ゲームは現実の自分の姿を知って付き合い方を学ぶ機会を与えてくれるね。けどそれを「ゲーム感覚」でやってたら妥協しがちになって、土壇場で踏みとどまれなくなる、と。幻想の自分の世界から抜け出せず負けの精神が身に付く、と」

「それだけじゃなくて、うまく言えないんだけど、ゲームをバカにしたようなこの言葉、なんか嫌な予感を喚起させるんだよなぁ」

「ふーむ」

「たとえばミサイルとか地震とか」

「というと?」

「あいつら大したことねーよ。きたらきたでしょうがないよ。そんなことしたって直撃したら意味ないだろ(笑)」

「人工知能や技術進歩なんかに対してもだよね。人間の創造性とか所詮機械とか言ってさ」

「備えようとしないどころか、考えること自体拒絶してる。「土壇場」を舐めてると思うんだ」

「舐めてなかったら準備するはずだし、まして準備しようとする人を茶化したりはしないね」

「そうなんだよ。「土壇場」だけじゃなく、人間があっさり思考放棄することとか、放棄した人間が短絡的で自滅的な愚行に走ることとか、そういうことまで含めて全部舐めてるんじゃないかと思うんだ」

「思考放棄すればその瞬間は重圧から解放されて楽になるからね。この欲求を抑えるのがいかにしんどいか、ってことまでをも舐めてる。舐めてるからこそ、土壇場を経験させてくれるゲームをバカにしてしまう」

「何かしらを真剣にやっていれば多かれ少なかれ土壇場を経験する機会があると思うし、それを知ってたらバカにはしないと思うんだよ。「ゲーム感覚」「カネにならない」「時間の無駄」・・・・・・」

「ゲームをバカにする者ほど普段から「ゲーム感覚」で物事に取り組んでいるのではないか、と。現実派?の方が実は現実を舐めてる妄想人間なのではないか、と」

「妄想の世界に没入して土壇場を舐めたままで・・・・・・大負けする奴の典型じゃないか」

「このままじゃ大負けの道連れってわけだ。いやいや、それにしても面白い話じゃないか、ゲームをバカにする者はゲームの世界を生きる、はっはっはっ」

「そうそう、直視せざるをえなくなったら笑って誤魔化す、これもよく使われる手法だよな」


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