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モノクローム

夢から覚めると、冷たい空気、温かい布団、一日が始まる
起床を強要する現実世界の重力
今日のスケジュールは、あれ?これ?それ?どれ?
曖昧な意識に浮かぶのは、制約の喜びか、強制の悲哀か、順応者の自明か
あるいは日常の平凡か、「スケジュール」の超越が自由の条件であるという気づきか

軋む心音は弔いの音
黒々と群れる頭が規則的に揺れ、木の葉が舞い落ち歪む
秋が去り、冬が来る、ただそれだけのことだ
希望も無ければ、絶望も無い、無、無、無
顔の無い表情、表情の無い笑い、笑いの無い顔
かろうじて明かりを灯していたはずの瞳が、クルクル、クルクル、回転し
灰色に濁った眼球に変わる・・・・・・変わる?戻る?そう、戻る
何も変わってはいなかった

雪解けの音が春の訪れを告げたとして
春が訪れ、夏へと変わり、秋に移ろい、冬が来る
そして、雪が積もり、雪が解ける
安定も無ければ、変化も無い、無、無、無
モノクロームの世界
一思いには殺さず、ジワジワ、なぶりながら、何年も、何十年もかけて
ジメジメ、ヒソヒソ、互いが互いを追い詰めていく世界
朝、冷たい空気が刺す痛み、けど、おかげで忘れられる
黒々と群れる頭が規則的に揺れる、年齢や性別など滑稽な区分けにすぎない世界
みんな平等に、同じ類の装いで、ユラユラと、自発的に、進むべき所へ進む

モノクロームの世界を、モノクロームの世界であると指摘することは
モノクロームの世界に馴染んだ、モノクロームの住民の逆鱗に触れる
モノクロームのあり方こそが、ヒトがあるべき唯一の完成形である
というモノクロームの思想に染まっているから
平然と同居する信念
ヒトはみなモノクロームであるべし・我々の世界はモノクロームではない
矛盾を押し付け合い、馴れ合い、傷つけ合い
何年も、何十年もかけて、互いが互いを染め合う世界
本性を抽象し確実に心を裂けるよう拵えられたナイフを握りしめ
互いが互いを脅し合う世界
「自分」だけに集中し、「自分」だけを見ることに決めた、モノクロームの住民

ヒトが考えるべきことは何か!
生存、成長、充実、将来、幸福、自分、自分、自分!即ちモノクロームの教え
輪郭を持ちえないそれらに輪郭を与える、その時点で紛うことなき虚偽であるが
しかし一瞬の安定はそれなしでやっていけないと錯覚させるに十分である
代償として何を失うか気づき戸惑う間も無く
ヒトは縋るように輪郭を求め、誘われるまま流れゆく
輪郭の中身は問わない、どんな内容もある一色から生じるコンテンツにすぎないから
モノクロームの世界に奉仕するだけの、モノクロームの消費にすぎないから
モノクロームの住民、その集積としてのモノクロームの世界
絶対的秩序を確立したモノクロームの循環
循環を漂うヒト、ヒト、ヒト、放り込まれるヒトノコ、赤ちゃん!
モノクロームの重力が、夢の世界まで侵し
囚われれば囚われるほど、約束された理想から遠ざかる
それでも!それでも!と首を振って叫んでは
性懲りもなく回り続ける世界、モノクロームの世界


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