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雪解けてしんそう

「う~、さむいさむい、やっぱり電車止まっちゃったかぁ」

「いやぁ、これは困りましたなぁ」

「ええ、ほんとに」

「こうなることは数日前からわかりきっていたのに」

「それなのに出勤しろだなんて、この国の会社は本当にどうかしていますね」

「そうでしょうか?」

「こんな日に出勤させるんですよ?おかしいじゃありませんか」

「私たちは、出勤するよう会社に強いられたのでしょうか?」

「え?」

「会社から、くるな!くるな!絶対くるな!と言われたら、どうです?」

「ハハハ、そりゃあ、嬉しいですよ。やった休みだ!って」

「あなたは会社にとってなくてはならない存在なんですね」

「どういうことですか?」

「不安じゃありませんか?どうしても、絶対に、会社にはあなたが必要だ、みんながそう認めていて、かつあなた自身もそのことを知っているなら、何の不安もなく休めるでしょう。しかし、そういう人が今ここで一人震えながら電車を待っていますかね?」

「ちょっと勘弁してくださいよ。うぅ、急に胸が苦しくなってきた」

「子供の頃、学校を休むと不安になりませんでしたか?」

「ええ?どうだろう、全然覚えてないなぁ」

「今、集団内の「自分」の部分に穴があいている、もし、別の何かが、その穴を埋めてしまったら、どうしよう」

「そんなぁ、考え過ぎですよ」

「次の日の足取り、重くありませんでしたか?自分がいない間に、世界が変わってしまったのではないか、と」

「世界が変わる・・・・・・う~ん、やはりそんな昔のこと覚えていませんよ」

「私も全く覚えていないので、もうしばらくお付き合いください。どうして私は不安を感じたのでしょうか」

「えっと、覚えていないんですよね?」

「はい、全く覚えていません。しかし不安になるのは事実なのです、なぜでしょうか?」

「まぁ、仲間外れになる不安はあるでしょうね。何をするにも、クラスの中で何の役割もなくポツンとしているのは、つらいことですから」

「信頼している仲間同士だったら、そもそもそういう不安は生じますかね?」

「生じないでしょう。不安になるのは、その関係が表面的にいくら良好にみえようが、口でいくら「最高の仲間」「大好きな仲間」と言っていようが、実際は不安定あるいは敵対的であることを知っているから、自分がいない間に、何かが起こるのではないか、と思わずにはいられないから」

「あなたはなぜ不要不急の仕事をしに、今日こうして出勤したのですか?」

「さぁ、なぜでしょう」

「会社に強いられたんじゃなかったですか?」

「・・・・・・」

「つまり「いけないこと」なんですよ。一日休んだぐらいで世界が変わるはずない、それはよくわかっている。けどなんだか気味が悪い、嫌な感じがする、不安になる。それが「いけないこと」だから」

「「いけないこと」・・・・・・いや、考え過ぎですよ。誰かにそうと教わったわけでもないし、なにより誰もそんなこと口にしてないじゃありませんか」

「もし明日も同じように、あるいはもっとひどく雪が降ったとしたら、あなたはどうします?」

「休みを取る都合が・・・」

「といった言い訳をしつつ、文句を言いながらも、出勤するのではありませんか?自発的に」

「・・・・・・ハハハ、おっしゃる通り!残念ですが、所詮社畜ってことですよ」

「こうした行動を社畜と自嘲することは、完全に誤魔化しですよ」

「誤魔化し、ですか?」

「あなたは会社に尽くそうと思って出勤したのですか?ここでこうしているのは会社への忠誠心の表れですか?」

「そりゃまあ、自分の場合は違う、かもしれませんが・・・」

「大半の人が違うんですよ。社畜的行動を取る人は大勢いますが、会社に忠誠を誓っている人はほとんどいません。鎖がどこに繋がっているか、見誤ってはいけない」

「自分を縛っているのは自分自身ということですか?」

「それではいけない。「会社」や「自分」などの慣れ親しんだ観念に安易に帰属させてはいけない。ここは人間の言語的思考の陥穽ですから、常に気を付けなければならない」

「それじゃあ結局私たちは何に縛られているのですか?」

「システムですよ。生活を人質に雇用のイスにしがみつくことを強いるシステム、その「力」は現実を遍く覆い尽くし、いつの間にか現実そのものと化している。システムが現実を規定し、現実が日々の行動を規定し、人々は適応的な「ねばならない」「してはいけない」を自発的に内面化していく。適応的な価値観を内面化していく。「世間の目」を内面化していく」

「システム、ねぇ。あまりピンときませんなぁ」

「あなたが休んでいる間に会社に居場所がなくなり、無職になったら・・・・・・どう感じます?」

「やめてくださいよ!縁起でもない」

「わかりました、しかし「社畜」といった言葉に逃げてはいけませんよ。これには「会社対個人」というピント外れの世界観が反映されていますからね」

「確かに「社畜」で済ませてしまう方がずっと楽かもしれない・・・・・・あぁ、どうやら電車が動き出すようです。行きましょうか、ちなみに明日のご予定は?」

「出勤ですな。雪が降ろうが、火山が噴火しようが、線路を這ってでも、不要不急の仕事をしに・・・・・・うひひ」

「うひひ、社畜なんていない!社畜なんていない!みなさんご一緒に!!」

「社畜なんていない!」
「社畜なんていない!」
「社畜なんていない!」
「社畜なんていない!」
「社畜なんていない!」

「さぁ、いざ、不要不急の明日へ!」


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