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干乾びたような誰かの手

気がつくとイスに座っていて、手には数枚のカード、描かれている記号が何なのか、カードがどんな意味を持つのか、そんなことさえわからない。

「時間なので」

ゲームは突然始まった。

「早く手を打たないと負けちゃうよ?」

クスクス笑い。

「おいおい、そうは言ってもルールはちゃんと守らないとねぇ」

ヘラヘラ笑い。

「つまり、そのカードは使えないってことさ」

訳がわからないからその薄気味悪く不自然に輝いた眼をじっとみつめるしかなかった。ああ、ヒトがいたんだ・・・・・・そりゃそうか、ゲームなんだから。

「なんだよ!ルールはルールだ!なぁ!?」

大袈裟な身振り手振り、目配せ。こいつらはルールを知っているらしい。というよりこいつらがルールをつくっているのか、あるいはこいつらは既にルールなのか。つまりルールがこいつらと同じ類の存在の集合によってこいつらと同じ類の存在の集合のためにつくられたとしたら、こいつらは“こいつら”に生まれた時点で意識的にどうこうするまでもなく既に“ルール”そのものなのである。

「仕方ないよな、ルールなんだから」

どうやら決着がついたらしい。

「自分でパスを選び続けたんだから、ちゃんと責任とらなくちゃ」

そう言って世界は笑った。

「あいつじゃなくてよかった~」

イスとテーブルがテキパキと片づけられるのをボンヤリ眺めていると、目の前に人間の道が出現しており、その先にはドアがあった。気をつけの姿勢をとるスーツ姿の人間の道、みんな首から“支援者”と書かれた札を下げている。不意に腕を組まれたのでハッと横をみると、両脇は二人の“支援者”に固められていた。頬がこけて疲れたような青白い顔、しかし眼は虚ろに輝いている。二人はニコニコと前だけを凝視しながら、腕に力を加え進むよう促してくる。手をとって共に歩く“支援”、ニコニコしてはいるが強烈に力を加えてくる。転ぶように一歩前に進むと、世界から歓声が上がった。

「みなさん、これこそが“人間”であります。障害を持つ人も、問題を抱える弱者も、どのような“個人”も、誰一人見捨てることなく“社会”の構成員として各々の個性を発揮し、しかるべき役割を担う・・・・・・自分の力で手にする居場所、そして人間としての尊厳・・・・・・このような包摂こそがまさに人間の“人間”たる所以なのであります!みてください、自らの足で立って歩き、今まさにこの世界で生きていく進路を自分で選択しようと前進する対象者、そのかけがえのない人生に寄り添う支援者!一歩一歩、すなわち一つ一つの選択、生きること!そう、生きることの力になりたい!そんな多くの人々の思いが実現させた社会的支援システム!」

世界は拍手を送り、先ほどのゲームで手に入れたらしい“カネ”の極一部を恭しく納めてみせる。称賛の声、拍手喝采。

「これが“人間”であります!」

“支援者”の手を振りほどいて道の外に出ようとするも、道の“支援者”に突き飛ばされてあっさり取り押さえられた。訳がわからないからその薄気味悪く不自然に輝いた眼をじっとみつめるしかなかった。

「これが我々の仕事なんですよ」

さっきまでのニコニコが嘘のように無表情へと変わった“支援者”に起され、5人になった“支援者”に手足胴体を抱き押さえられた。「ちゃんと前を向いて生きなきゃなぁ」と呟く声が聞こえた。ドアの前まで滑稽に“自分の足で歩く”と、“支援者”がドアノブまで手を運びそれを握らせた。つまりこれが“責任をとる”ということらしい。ノブを回し、“自分でドアをあける”と、全身が光に包まれた。あぁまたかと思ったが、なぜそう思ったのかはわからなかった・・・・・・。

気がつくとイスに座っていて、手には数枚の・・・・・・手?手、干乾びたような誰かの手。


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