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もう今日が始まる

眠れなくて、窓を開ける
夜の風に、頬をあてる
逃げ場がないな
何も変えられないまま時間になるんだ

イスに座り、宙を仰ぐ
胸の痛み、虚空を紡ぐ
抜け出せないな
泣いてなくても涙は流れるんだ

もう明日に連れていかないで

また未来に託して先に延ばす?
“自由”を信じて耐えてみる?
知っているでしょ、あるのは“自然”と“不自由”だけで
“自由”なんて観念、ただの方便

「生きる意味を考えることができるのは人間だけだから」、もう誤魔化さないで

「考えなければならない」なら強制なの
「考えずにはいられない」なら欺瞞なの
「考えないとやっていけない」なら麻酔なの
目の前の現実としての人生に“特権”を見出したって・・・・・・

だからもう嘘を吐かないで

また過去に縋って夢をみる?
“愛”を信じて耐えてみる?
知っているでしょ、あるのは“理屈”と“規制”だけで
“愛”なんて替え玉、孤独の木馬

だからもう繰り返さないで

剥きだした今を飲んでみる?
思考をやめてゼロになる?
そうすればほら、希望も絶望もない静けさが訪れて・・・・・・
でも、救われないな

もう今日が始まるから


干乾びたような誰かの手

気がつくとイスに座っていて、手には数枚のカード、描かれている記号が何なのか、カードがどんな意味を持つのか、そんなことさえわからない。

「時間なので」

ゲームは突然始まった。

「早く手を打たないと負けちゃうよ?」

クスクス笑い。

「おいおい、そうは言ってもルールはちゃんと守らないとねぇ」

ヘラヘラ笑い。

「つまり、そのカードは使えないってことさ」

訳がわからないからその薄気味悪く不自然に輝いた眼をじっとみつめるしかなかった。ああ、ヒトがいたんだ・・・・・・そりゃそうか、ゲームなんだから。

「なんだよ!ルールはルールだ!なぁ!?」

大袈裟な身振り手振り、目配せ。こいつらはルールを知っているらしい。というよりこいつらがルールをつくっているのか、あるいはこいつらは既にルールなのか。つまりルールがこいつらと同じ類の存在の集合によってこいつらと同じ類の存在の集合のためにつくられたとしたら、こいつらは“こいつら”に生まれた時点で意識的にどうこうするまでもなく既に“ルール”そのものなのである。

「仕方ないよな、ルールなんだから」

どうやら決着がついたらしい。

「自分でパスを選び続けたんだから、ちゃんと責任とらなくちゃ」

そう言って世界は笑った。

「あいつじゃなくてよかった~」

イスとテーブルがテキパキと片づけられるのをボンヤリ眺めていると、目の前に人間の道が出現しており、その先にはドアがあった。気をつけの姿勢をとるスーツ姿の人間の道、みんな首から“支援者”と書かれた札を下げている。不意に腕を組まれたのでハッと横をみると、両脇は二人の“支援者”に固められていた。頬がこけて疲れたような青白い顔、しかし眼は虚ろに輝いている。二人はニコニコと前だけを凝視しながら、腕に力を加え進むよう促してくる。手をとって共に歩く“支援”、ニコニコしてはいるが強烈に力を加えてくる。転ぶように一歩前に進むと、世界から歓声が上がった。

「みなさん、これこそが“人間”であります。障害を持つ人も、問題を抱える弱者も、どのような“個人”も、誰一人見捨てることなく“社会”の構成員として各々の個性を発揮し、しかるべき役割を担う・・・・・・自分の力で手にする居場所、そして人間としての尊厳・・・・・・このような包摂こそがまさに人間の“人間”たる所以なのであります!みてください、自らの足で立って歩き、今まさにこの世界で生きていく進路を自分で選択しようと前進する対象者、そのかけがえのない人生に寄り添う支援者!一歩一歩、すなわち一つ一つの選択、生きること!そう、生きることの力になりたい!そんな多くの人々の思いが実現させた社会的支援システム!」

世界は拍手を送り、先ほどのゲームで手に入れたらしい“カネ”の極一部を恭しく納めてみせる。称賛の声、拍手喝采。

「これが“人間”であります!」

“支援者”の手を振りほどいて道の外に出ようとするも、道の“支援者”に突き飛ばされてあっさり取り押さえられた。訳がわからないからその薄気味悪く不自然に輝いた眼をじっとみつめるしかなかった。

「これが我々の仕事なんですよ」

さっきまでのニコニコが嘘のように無表情へと変わった“支援者”に起され、5人になった“支援者”に手足胴体を抱き押さえられた。「ちゃんと前を向いて生きなきゃなぁ」と呟く声が聞こえた。ドアの前まで滑稽に“自分の足で歩く”と、“支援者”がドアノブまで手を運びそれを握らせた。つまりこれが“責任をとる”ということらしい。ノブを回し、“自分でドアをあける”と、全身が光に包まれた。あぁまたかと思ったが、なぜそう思ったのかはわからなかった・・・・・・。

気がつくとイスに座っていて、手には数枚の・・・・・・手?手、干乾びたような誰かの手。


いいじゃないですか、賃金を貰っているんだから

「うっ・・・・・・うっ・・・・・・もう働きたくない・・・・・・こんな仕事に一体何の意味が・・・・・・」

「これは大変だ!君、今すぐ“正しい社会人セラピー”を受けなさい」

「はあ、セラピー?」

・・・・・・

「ハイハイはじめまして、本日はどうされましたか?」

「ええ、自分が日々やっている仕事が本当に意味のあることなのかわからなくなってしまいまして」

「なるほど」

「仮に社会的に意味のあることだったとしても、そんな私の貢献分なんて機械やシステムの恩恵で成り立っているにすぎないわけで」

「なるほど」

「人々の積み重ねや知恵の上に成り立っているにすぎないわけで」

「なるほど」

「確かに人生の大半を仕事に充てている、残業もしている、努力している、重圧に耐えている、苦しんでいる、しかしそんなことでもってどうしてこの賃金が正当化・・・」

「そうです!いいじゃないですか、賃金を貰っているんだから」

「は?」

「論理が全く逆なんですよ、所謂“心理的倒錯”と呼ばれるものです。つまり、人生の本質は“何から賃金を導くか”という無限後退を結果するだけの不毛な形而上学的アポリアの陥穽にはまることではなく“賃金から何を導くか”という実践としての格闘なのであります」

「なに・・・・・・?なに?要するにより多くの賃金を確保できさえすれば後はどうでもいいということですか?」

「理解のきっかけを掴むためには、あえて極めて単純化した表現を選択することも必要かもしれません」

「じゃあボランティアとかどうなるんです?」

「賃金が発生しない、ただそういう“ランク”の活動というだけの話です」

「“ランク”って・・・・・・じゃあ低賃金の仕事はどうなりますか?規制や保護・・・・・・つまり私のような者のせいでそうなっているわけですよね」

「いいですか、何より大切なのは“賃金を貰っている”という事実、それによって生活が成立して自立しているという事実」

「だから日々やっていることが“生活のための賃金稼ぎ”にすぎないんじゃないか、“自立”が不正で成り立っているんじゃないか、ということで悩んでいるのですが」

「ならどうして今日も会社に来たのです?」

「そりゃ賃金を稼がないと生きていけませんからね、罪悪感があるとはいえ」

「つまりカネのためということですね?」

「まぁ、言ってしまえば」

「いけませんねぇ、あなたには“人や社会の役に立ちたい”という気持ちがないのですか?」

「へ?」

「働いて人や社会の役に立ちたい、これは“人間の本能”のはずですが?」

「いやいやいや、え?だから私は今ここにいるのでは?確かにカネや経歴や世間体のことを考えてイスにしがみついていますが、ただその貢献度がゼロ以上ならともかく、マイナスとしか思えなくなって苦しいから、ここにきた・・・」

「働いて人や社会の役に立ちたい気持ちがないから“職場”ではなく“ここ”にいるのでは?」

「ですからそういう気持ちがあっても実際にはマイナスになっていたらダメじゃないですか」

「“実際にはマイナスになっている”と感じながら日々働かれているわけですか?」

「さっきからそう言っています」

「証拠は?」

「え?」

「“実際にはマイナスになっている”証拠ですよ」

「証拠と言われましても・・・・・・」

「賃金」

「え?」

「あなたは“実際にはマイナスになっている”と悩んでらっしゃる、しかしそれを支持する確かな証拠をあなたは提示できない。対して、あなたは賃金を貰っている」

「ですからマイナスの行いで賃金を貰っているから・・・」

「それは所謂“認知の歪み”とか“自己中心思考”と呼ばれるものです。あなたの悩みは主観的な思い込みでしかないということですね。対して、賃金は絶対的な客観的事実です。いいですか、これから正しい社会人として社会に貢献し続けていくために、あなたは“自分”を中心とした思考を脱却し、“全体”すなわち賃金を中心とした思考に転換する必要がある。“賃金から何を導くか”という実践的な知とハタラキの領域に足を踏み入れ“賃金を貰っている”という自明な前提に根差すより現実的なパラダイムを構築し日々の仕事を高く広い視野から捉える能力を身に付け新たな地平を切り開く、これこそが今のあなたの課題であります」

「うぅ・・・・・・訳がわからない・・・・・・ハッ・・・・・・えっと、さっきは“カネのため”を非難していませんでしたか?」

「“賃金を貰っている”という事実が“人や社会の役に立ちたい”という気持ちを導出する、では“賃金を貰っている”という事実は“カネのため”という気持ちを導出しますか?」

「うぅ・・・・・・頭が痛い」

「つまり賃金を貰っていながら“実際にはマイナスになっているのでは?”という疑問を抱いたということは、あなたが本心から貢献したいと思っていなかったこと、嘘をつき続けてきたことを意味するのです。人間の本能をありのままに発揮して正しい社会人として成長し、“人や社会の役に立ちたい”という思いをきちんと育んできていれば、疑問の余地などどこにもないはずなのです、なぜなら賃金を貰っているんだから」

「頭が・・・・・・私が間違っていた・・・・・・?私の気持ちは嘘だった・・・・・・?」

「そうです、あなたの気持ちは倒錯的で間違っていました。気持ちに意味を与えるのはあなたではなく賃金なのですよ。さぁ、人間の心を取り戻すのです。“人や社会のため”という気持ちを育てなくてはいけません」

「私の気持ち・・・・・・全部嘘だった・・・・・・チンギン・・・・・・ホンモノ」

「賃金が賃金だから賃金以外も賃金したがって賃金と賃金で賃金すれば賃金が賃金を賃金する。意味わかりますか?」

「ハイ、トッテモ」

・・・・・・

「調子がよさそうだね」

「ボチボチですわ」

「いやぁ、実はボクも悩んでいた時にあのセラピーに救われたんだよ。君にも効果があって本当によかった」

「こうかは ばつぐんだ!」

「うんうん、まだ慣れないようだが、まぁ悩みから解放されてよかった」

「なやみ?あぁ、どうでもいいんじゃないですか?だって、賃金を貰っているんだから」

二人「あっはっは」


間違って間違いに縋り間違い続ける

この世界は厳しい
といっても、世界が厳しくしているわけではなく
世界を裏切った当然の報いだから
「世界は厳しい」なんて単なる責任転嫁であり
そんな態度こそが裏切りの確かな証拠なのだ

中途半端に知恵をつけた存在は
その中途半端さゆえに
世界を裏切らずにはいられなくなる
他の生き物たちをみればわかるだろう
みんな中途半端さとは無縁に世界と調和して生きている

苦しい?当然さ
世界を裏切って世界から浮き上がってしまったのだから
苦しい苦しい、一瞬一瞬一呼吸一呼吸が苦しみに満ちて
苦しい苦しい、目を回して吐いて彷徨ってしがみついて
苦しい苦しい、そしてまた再生産反復拡大

中途半端な知恵は罪であり罰なんだ
なぜか?簡単さ!間違い続けるしかなくなるからだよ
世界はね、うまい具合にそういう風にできているんだ
調和する者は正しい道へ進み、裏切り者は必ず不正解の隘路へ進む
ねぇ?虚心坦懐に「自分」を省みてごらんよ

あぁ苦しいねぇ、苦しい、本当にどうしようもない、絶望的だ!
何の方針も立たない前が見えない今どこにいるのかわからない不安で孤独で耐えられないだからひたすら無我夢中に鞭打って進む進む進む進む進んでいるなんて嘘だ!ここはさっき通った五里霧中違うきっと気のせい分解空中精神集中再結集それなのに何の方針も立たないしたがってまた夢中・・・・・・したがって?間違い続けるしかない。絶望がみせる幻覚に半端者らしくピョンと飛びつき何度も何度も何度も何度も

ほんと困っちゃうなぁ、うまくできてるんだから、縋りたくなるようにさぁ
思わずピョンと飛びつきたくなるようにさぁ、飛びつかずにはいられないようにさぁ
やんなっちゃうなぁ、参っちゃうよなぁ、ほんと
「自分で選んでいる」と信じ込めるようにさぁ
ご自慢の知恵を使いたくなるようにさぁ、何度も同じように間違えるようにさぁ

「みんな同じなんだから(きっとこれで合ってるんだ)」
「みんなわからないんだから(そもそも間違いなんてないんだ)」
「みんなそうやって苦しんで生きてきたんだから(きっとこれが当たり前なんだ)」
「幸せがあるのは苦しいことのおかげなんだから(きっとこれは善いことなんだ)」
「世界は厳しいんだから(きっとこれが正しいんだ)」

間違いばかりがどんどん増えていく、本当につらいなぁ

知恵を使って複雑に思考し正解への単純な道を選べない
知恵を使って安易に短絡し正解への複雑な道を選べない
知恵を使ってあれこれ想像したのに器用に正解の道だけを見落とす
知恵を使ってあれこれ議論したのに正解の道を間違いと決めつける
同じように間違って間違いに縋り同じように間違って間違いを増やす

空々しい因果でつなわたり、けばけばしい飾りで足るを知る?
下を眺めて蜜を吸い、比較と優位の技磨く
思い出探して抱きしめて、同じ間違い繰り返す
孤独な僕が泣いたとき、孤独な君がくれたやさしさ
それでも嬉しかったんだ、ちょっと肯定できたんだ

今日も苦しいと塞ぎ込み、世界の声には耳塞ぐ
嫌な予感に首を振り、うまいお話信じ込む
止めるな息の根先延ばし、「ほんとう」を「あい」とすり替えて
地獄で営むおママゴト、腐って死んでいく心の子
ああしあわせになりたい、ほら、また未来に向かって間違いを投げる


怖い夜が去った頃

不意打ち、全身を劈くバケツが落ちたような音
雨が欄干にカンカン当たる規則的な音
窓がガタガタ揺れる音
ビンとビンがぶつかって弾けたような音
ドアが開閉されたような音

深夜、正確な時間は判然としない
恐怖で身体が動かない、よって確認する術なし
頭ではわかっている
雨は外で降っている、音は外で鳴っている
しかし聞こえるのは頭の周り、すぐ右で、左で、前で後ろで家の中で、音が響いている

街から聞こえるサイレンは束の間の救いだ
なぜかって、サイレンは遠くから聞こえるままに遠くから聞こえるから
おかげで少し落ち着いた、小説でも読んで朝が来るのを待とう
電気をつけると、閉まっていたはずの押し入れが少し開いていた
瞬間、いつもの部屋が急によそよそしいニセモノと化し、呼吸が乱れる

思わず「わあっ!」と小さく叫び身をかわした
すぐそばに誰かの気配を感じた
頭ではわかっている
ここには自分しかいない、だから気配の源たる呼吸は自分のものだ
しかし感じるのは頭の周り、すぐそばで、隣で、上で下で家の中で・・・・・・

我々は常に「まとまり」をつくっている
無意識に膨大なエネルギーを割き、感覚感情意味記憶を今この瞬間に結んでいる
「自分」なんて「まとまり」は所詮危うい一瞬一瞬の均衡の結果にすぎないのだが
普段は気にすることもなく、「自分」という幸せな幻想に没入している
こうやって、特にこれといった原因もなく、いとも簡単にズレてしまうのに

したがって、世界は一瞬一瞬が全て特別なのだ
したがって、ある反応が意図された娯楽なる刺激など、本来不要なのだ
一見退屈な日常世界のそこかしこに、裂け目が潜んでいる、穴があいている
仰向けになって人差し指と中指でお腹をポンポン小刻みに叩いてみれば
身体がズブズブと穴に沈んでいくのがわかる

今日は何の日だっけ?うんショッピングモールに行く日
映画館一瞬で何か観てヒトの群れ顔無くゲームセンター突っ切り
大聖堂の如き吹き抜け果てしなく長い長いエスカレーター寄る辺なく
食品売り場の迷宮通り抜け駅から大学に向かい映画館のような教室真っ暗闇授業点滅
で目を覚ますとカーテンに茶色いカマキリのような虫が動いていたので外に出そうか放置するか迷って結局外に出そうと起きて起きたら起きた

カラスの鳴き声に驚いても、遠くの音は遠くで聞こえた
新聞を運ぶバイクの音、「たったこれだけしか寝れなかった」ことを意味する不愉快な音
それでも不愉快な音は不愉快な音として聞こえた
カーテンの隙間、薄明に浮かび上がる灰色の空
今こうしている間にも、どこかで誰かが死に、どこかで誰かが生まれている
濁ったままのこんな世界でも生命は循環する、淡々と、怯える私を置き去りに


プロフィール

遊民

Author:遊民
読みたい本が山積みなのでニートしてます。

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